遊園地
巡る、巡る、走馬灯。
メリーゴーランド。
ぐるぐるティーカップで吐いた弱音。
ひとり、ぽつんと立ってる。
迷子のお知らせ。
機械が発する、ぼくの名前。
周りは煩い。
家族連れ、カップル、その他。
係員に、迷子センターはどこ?
勇気を出して聞こうとした。
気づけば目線は彼の首もと。
アナウンス、流れるのは違う子。
迷子じゃなくなった。
でもひとりぼっち。
クレープ屋もアイス屋も過ぎる。
赤い風船が飛んでいく。
子供が泣いてる。
持ってた青い風船、泣き止む子供。
既視感。
手を振って別れる。
入退場口はどこだろう。
矢印、何百メートル。
長蛇の列を横目に急ぐ。
時計、今、12時半。
リミットは13時、だったような。
あれ、進んでる?
矢印、何も書いていない。
駄々をこねる少年。
仕方ないと笑う誰か。
誰かが右を指差した。
喧嘩してる少年と誰か。
誰かの爪先は左に向かう。
ポップコーンの匂い。
ごめんねで渡す少年。
二人の体の向きは正面。
今、何時。
12時58分。
手にしたチケット。
帰る場所が刻まれたそれ。
走る。消える背景。
間に合わなければ、ここで。
ざわめく、客の無意味な言葉。
そのなかに、ひとつ違う。
生きた声が通る。
呼ばれた名前。
ゲートを飛び出す。
「さよなら」、幼い二重の声。
さよなら、昔の自分。
12時59分59秒。
「おかえり」、温かいきみの声。
「ただいま」、震えたおれの声。
きみが包み込む。
紡ぐのは、未来だけ。
翔る、翔る、走馬灯。
ジェットコースター。
きみはいつだって、助けてくれた。




