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My Little Rainbow  作者: kanoon
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相合い傘

雨上がり、

君は隣にいない。




昇降口、私は雨の降る外を眺める。

「あれ、傘ないの?」

大好きな声。

隣を見れば、大好きな姿。

頷けば、優しい笑みを浮かべる。

「入りなよ」

そう言って傘立てに向かう背を追う。

黒い傘が咲く。

二人並べば、切り取ったような狭い世界で。

隣の暖かい空気に胸がざわめく。

背の高い彼は少し傘を此方に傾けて。

互いに濡れないように、少しずつ近づいていった。

口数の少ない帰り道。

口を開けば愛しさが零れそうで、逆にありがたかった。

長くない筈の道のりは、濃く心の中に残る。


「ここ、だから」

タイムリミット。

一方的な擬似恋愛は終わり。

「じゃあ、またな」

そう言う彼の肩は片方だけ濡れて。

確かに一緒にいた証のはずなのに。

遠く感じた。明日になればその染みもなくなって。

「今日はありがとう」

にっこりと笑って頭を撫でてくる。

勿論癖だって分かってる。

仲の良い子には、同性にも異性にもするって。

だから今更ドキドキなんてしないけど。

今彼の目に映るのは私だけだからいいや、なんて。

純な幼い恋愛のような考えをして。

「また明日ね」

私も笑った。

「おう、またな」

手を上げる。

一歩、一歩、離れていく。

「ばいばい」

手を振り返す。

遠ざかる背から目が離せない。

暫くは振り返ってきた彼も、もうこちらを見ない。

だけど私はずっと見ていた。

黒い傘は高い位置で揺れて。

小さくなって。

路地を折れて、消えた。



次の日、目が合う。

「おはよ」

立ち位置は変わらない。

少し近付いた気がしたのは、私の勘違いだったのかな。

だけどその日から、雨の日が好きになった。


「また傘ないの?」

呆れた声がする。

驚いて振り返ると、声に似合わない笑顔が。

「帰ろ」

その一言は、胸に小さな虹を作った。

雨の日限定の私の恋。


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