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揺らぐ群衆


黄金のヒーローの声が広場に響く。

「怪物に騙されてはいけません! 少女も操られているのです!」


だが、先ほどの冷たい一言を聞いた者の心には、不安が芽生えていた。

「……今の、聞いたか?」

「なんか……笑ってなかったか?」


ざわめきが広がり、人々の表情は歓喜から動揺へと変わっていく。


「本当に……怪物なのか?」

「でもヒーローが言うなら……」

「いや、見たぞ! 怪物が子供を助けるのを!」


賛否が入り混じり、群衆は二つに割れた。

正義を信じる声と、不信の影がぶつかり合う。


「俺はヒーローを信じる!」

「いや、あれは違う! 本当の怪物は……!」


言葉は次第に怒号に変わり、ついには人々同士が突き飛ばし合いを始めた。

誰が正義で、誰が悪なのか――答えのない混乱だけが膨れ上がっていく。


少女は怯え、黒き男の背にすがった。

「みんな……どうしちゃったの……?」


彼は静かに群衆を見渡す。

その瞳に映るのは、恐怖に支配され、自ら正義を見失った人々の姿だった。


(……これが、“作られた正義”の末路か)


黄金のヒーローは群衆の混乱を見て、薄く笑った。

「さあ……選ぶんだ。私か、怪物か。どちらが正義かを。」


広場は熱と狂気に包まれ、秩序は完全に崩壊していった。





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