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実験体の記憶



彼は実験体であった。

ただただ「悪」を作り出すためだけに合成された存在。

幾度も切り刻まれ、肉体は縫い合わされ、皮膚は継ぎはぎで覆われていく。

人がひと目見れば叫び出すような、恐怖と嫌悪を煽る姿。

――悪の象徴。


そう呼ばれるために生まれた。


だが、彼の瞳は澄んでいた。

実験器具に縛られ、薬液に沈められる時も。

蔑む声と罵声を浴びせられる時も。

その奥に宿るのは、不思議なほど静かで温かな光だった。


「……大丈夫か?」


同じく実験に巻き込まれた囚人たちに、彼はそう声をかけた。

言葉の端々には、優しさがにじんでいた。


彼は、誰も憎まなかった。

自分を実験体に選んだ者たちさえも。

むしろ――自分が彼らの代わりに苦しむことで、誰かが救われるのなら、それでいいとさえ思っていた。


だが、その優しさこそが、彼を「悪」と決めつけたい者たちにとって最大の皮肉となった。




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