最終章 ― そして、光が残った ―
崩壊した研究塔の跡地。
夜明けの光がゆっくりと差し込み、瓦礫の間を柔らかく照らしていた。
風が静かに吹き抜ける。
あの激しい戦いの痕跡はまだ残っている。
だが、不思議なことに――
空はどこまでも澄み渡り、世界はようやく“静寂”を取り戻していた。
瓦礫の上に、黒い鎧が崩れ落ちている。
その中から一人の男がゆっくりと立ち上がった。
――黒き男。
彼の体からは、もうあの赤い光は消えていた。
融合の力は失われ、ただの“人間”としての姿に戻っていた。
彼は空を見上げ、小さく呟いた。
「……終わったのか。」
その胸の奥で、かつて共にあった五つの声が微かに響く。
〈ありがとう〉
〈俺たちの願い、叶ったな〉
〈もう、お前の中で生きてる〉
黒き男は微笑んだ。
「そうだな……みんな、ありがとう。」
遠くで、助けに来た人々の声がする。
崩壊した街にも、まだ生きている者たちがいた。
誰かの泣き声、誰かの笑い声――
それは確かに、生きている世界の音だった。
黒き男は歩き出す。
背中にはもう、鎧も、武器も、何もない。
だがその瞳には、確かな光があった。
> 「ヒーローなんて、もういらない。
人間が――人間として生きる世界でいい。」
朝日が昇る。
その光が、かつて“黒き悪”と呼ばれた男の背中を優しく照らした。
風が、静かに通り抜ける。
そして、誰も知らない場所で――
Dr.ヴァレンの残した端末が、ひとりでに起動した。
> 【融合データ:保存完了】
【次期計画:CODE ∞】
画面の奥で、再び淡い光が瞬く。
――正義と悪の狭間で、生まれた“何か”が、まだ眠っていた。
《完》




