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黒き男、街に立つ
夜の街は雨に濡れ、ネオンがぼやけて揺れていた。
人々が集う広場では、鮮やかなスポットライトが踊り、喝采の声が響く。
そこに立つのは――正義の象徴、派手で艶やかなヒーロー。
笑顔で手を振り、観衆に向けて決め台詞を放つ。
「安心してください! この街の平和は、僕が守ります!」
大きな拍手と歓声。
人々は疑わない。彼が正義であることを、そして彼が自分たちを救う唯一の存在だと。
――その喧噪の隅で、彼は立ち尽くしていた。
黒い外套に包まれた男。
街灯に照らされるたび、影のように不気味な輪郭が浮かび上がる。
子供たちは怯え、親たちは目を背ける。
彼の姿は“悪”そのものだった。
だが、その胸の奥には燃えるような想いがあった。
(……違う。あの笑顔の裏に潜むものを、誰も知らないだけだ)
彼は静かに拳を握りしめる。
嘲笑も、蔑みも、構わない。
ただ一つ、守るべき正義のために。
――正義と悪が交錯する夜が、始まろうとしていた。




