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堕ちる選択



 紅鎧の言葉に、偽りのヒーローの瞳が大きく揺らいだ。

 拳を振るう手は止まり、かつての少年のような影がその顔に浮かぶ。


 ――ただ、ヒーローになりたかった。

 それだけのはずだった。


 しかし、その一瞬の迷いを裂くように、耳元に囁きが響く。


 『聞こえるか……? お前にはまだ可能性がある』


 黒幕の声。甘く、毒のように心に染み込む。


 『このカプセルを飲めばいい。お前は誰よりも強大な力を得る。誰もが羨む、本物のヒーローになれるんだ』


 偽りのヒーローの手元に、いつの間にか小さなカプセルが転送されていた。

 掌に乗せたそれは、不気味に黒く光り、内部で赤い液体が蠢いている。


 「これを……飲めば……俺は……」


 群衆の視線が集まる中、彼の胸の奥で、幼き日の夢と現実の空虚が激しくせめぎ合った。

 紅鎧の声が届く。

 「やめろ! その道を選んだら……お前は二度と戻れない!」


 だが、その警告よりも先に、偽りのヒーローはカプセルを口に放り込んだ。

 ごくりと嚥下する音が、やけに大きく響く。


 直後、彼の全身が痙攣した。

 「がっ……! あ、あぁぁぁぁぁっ!」


 血管が浮き上がり、皮膚の下を黒い脈動が走る。

 筋肉は膨張し、骨格がきしみ、顔は歪み、声は獣の咆哮へと変わっていく。


 群衆が悲鳴を上げた。

 「ヒーローが……怪物に……!」


 紅鎧は愕然と目を見開く。

 「まさか……お前も……実験体だったのか……!」


 だが、偽りのヒーローはその事実に気づく余裕すらなかった。

 破壊の衝動だけが彼を支配し、燃え上がる欲望が口から吐き出される。


 「オレは……最強のヒーローだァァァッ!」


 次の瞬間、広場が震え、大地を割る咆哮が響き渡った――。




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