表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/20

偽りの残響



 拳と光がぶつかり合い、広場の石畳が砕け散る。

 紅鎧の猛攻に追い詰められた偽りのヒーローは、苦悶の表情を浮かべながら、なおも声を張り上げた。


 「ヒーローは……俺なんだッ! 俺しかいないんだよォ!」


 その叫びは、怒りに満ちていたが――どこか悲痛でもあった。

 紅鎧は拳を振り上げながら、その声の奥に潜む「影」を感じ取っていた。


 ――視界が一瞬、揺らぐ。

 次の瞬間、紅鎧の脳裏に流れ込む“記憶の断片”。


 ……少年の頃。

 誰よりもヒーローに憧れた一人の子供がいた。

 仲間たちと遊ぶときも、必ずヒーロー役を譲らなかった。

 だが、現実は残酷だった。


 「お前なんかがヒーローなわけないだろ!」

 罵声。笑い。蔑み。


 やがて大人になった彼は、権力者の研究機関に拾われる。

 そこで与えられた役割は――「人々の前で、理想的なヒーローを演じる人形」だった。


 「お前には“偽り”しかない。それで十分だ」


 作られた笑顔。与えられた台本。

 どんな悪事を働いても、人々は「ヒーロー」と信じて疑わなかった。

 彼自身の心が、どれほど空虚に蝕まれていったとしても。


 「俺は……っ、俺はただ……ヒーローに、なりたかっただけなんだ!」


 光の奔流と共に、偽りのヒーローが絶叫する。

 その声には怒りと同時に、確かな悲哀が混じっていた。


 紅鎧は拳を止める。

 澄んだ瞳がまっすぐに相手を見据えていた。


 「お前の中にも……本当は“なりたかったヒーロー”がいるんだな」


 その言葉に、偽りのヒーローの目が大きく揺れた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ