偽りの光
白々しい輝きが広場全体を覆う。
偽りのヒーローが掌に集めた光は、もはや“救いの光”ではなかった。
それは群衆を焼き尽くすための、純粋な破壊の輝きだった。
「ヒーロー様が……攻撃を……?」
誰かが震える声で呟く。
その言葉を皮切りに、信じていたものを裏切られた群衆の表情は、一瞬で絶望に変わった。歓声も喝采もすべて消え失せ、ただ恐怖の悲鳴だけが響く。
「ハハハッ! いい声だな! もっと聞かせろ!」
偽りのヒーローが高らかに笑い、光を解き放とうとする――。
その瞬間。
轟音と共に黒き男の身体が前に飛び出した。
「やめろぉぉぉッ!」
全身を盾にするかのように広げた腕。
切り刻まれた肉体、継ぎはぎの皮膚。そのすべてが無様で、誰もが目を背けたくなる容姿。
だが、その背は群衆にとって唯一の壁となった。
「こいつらに手を出すなら……俺が相手だ!」
声が響いた瞬間、少女が叫ぶ。
「がんばって! おじちゃん!」
その言葉が黒き男の心を貫いた。
誰もが忌み嫌った自分に、初めて向けられた“信頼の言葉”。
偽りのヒーローは鼻で笑い、光をさらに強める。
「正義ぶるなよ、化け物風情が!」
再び爆ぜようとする閃光――。
だが、黒き男の胸から不思議な鼓動が広がり、周囲の空気を震わせた。
澄み切った瞳が輝きを放つ。
「俺は……化け物なんかじゃない。俺は――守る者だ!」
次の瞬間、黒き男の腕から眩い閃光が迸った。
偽りのヒーローの光とぶつかり合い、轟音が夜空を裂いた。
群衆は息を呑み、少女は震える手で黒き背中を見つめ続けた――。




