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十六、母と子

 だが時計の上の穴からブラッド一号が顔を出すのに、一分もかからなかった。二人が彼を見上げた直後、城のそこかしこから爆音がして、火の手があがりだした。

「大時計に仕掛けてある自爆装置が作動したようです」

 彼はそう言ったが、さっきのメグのアホ行動によるものだという説明はしなかった。

「十分弱でここは吹っ飛びます。逃げたほうがいいですよ。メグは残しておいてください」


 高見たちが去ると、ロボットはあおむけの凛に近づいた。下半身は潰れ、腕も動かないようだ。

「もう無理だから、せめて私の首だけ持って逃げて」と凛。「脳のデータがあれば、また復活できる。ね、お願い」

 だが息子は嫌な顔をした。

「なんで、あなたにそんなことしなきゃいけないんです。ぼくは、あなたには恨みしかないんで。ここで消えてください」

 とたんにあわてだす母。

「私がいないと、メグになにかあったとき困るわよ!」

「じつは時空のゆがみのせいで、ぼくとあなたの精神は、つながっているようでして。メグに関する知識は、あらかた吸収しました。もう、あなたは用済みです」と背を向ける。

「あっ待ってブラちゃん! ひどいことしたのは謝るわ!」




 すでに小規模の爆発が起きている城の入口に着くと、高見は待っていたブラッケン軍の人たちに叫んだ。

「城が爆発する! できるだけ遠くへ逃げて!」

 わっと散ると、榊がブライトン牧師を背負った。

「鉄の馬は?」と老人。

「ガス欠でダメ。高見、あんたも来なさい」とお嬢様だっこした。が、いざ走ろうとして止まった。

「こいつもガス欠」

 言って高見は降りると、老人を連れてきて、背を向けてかがんだ。

「さ、乗り換えて」

「わ、わしはいい。ここでホリスと一緒になるから、あんただけ――」

「じゃかあしい! 四の五の言わずに、とっととおぶされ!」

 怒鳴られ、ビビって乗る神父。





 行きかけたブラッド一号だったが、すぐ戻ってきた。

「わかりました、データだけは残してあげます。そんなんでも、あなたはぼくの母親ですから」

「ああ、ありがとう! うれしいわ、ううう」と、さめざめ泣く。

「あなたらしくないですね。じゃ、いいですか」

 息子は首をサーベルで切断すると、それを持ち上げ、近くに上がっている火の中へ投げ込んだ。頭は燃え盛る炎に包まれ、白い灰になった。こうして桜庭凛博士は、全ての世界から消えた。


 ブラッド一号は、炎を眺めて言った。

「悪いけど、ぼくはあんたの父親にはなれない」

 凛の死と破壊への異常な執着は、ただのファザコンによるものでしかない、と彼は知っていた。彼の人工知能は、凛の脳を元にして作られていたので、その精神と人生は知り尽くしていた。そのデータは結局彼の頭に残っているが、本人とはとりあえず永久におさらばだった。


 だが、今度は彼があわてた。

「メグ?! メグうううう――!」

 見当たらないので呼んだが返事がない。そこらじゅう探して、やっと瓦礫の隅で遊んでいるのを見つけてほっとした。

 が、険しい顔になった。

(もう時間がない)(ぼくは平気だが……)


 自分だけ残ってメグが死ぬのは耐えられない。彼はメグを囲うように抱きしめたが、どうしても密閉とはいかない。体が大きくないのがもどかしい。だが、なんとしてもメグだけは爆発から守らねばならない。自分が人間でメグがロボットだったら、どんなにいいかと思った。でも、それだと逆にメグが悲しむかも。両方ロボットが一番だ。って、そんな都合のいい話はない。

 不穏に気づいたのか、メグのおびえが伝わってきたので、ブラッド一号はその耳に優しくささやいた。

「だいじょうぶ……だいじょうぶだから……」



 装置作動から十一分。大時計の底から最後の大爆発が起きた。轟音と共に城の周囲百メートルが吹き飛び、ブラッド一号とメグ、高見と牧師、そして榊に凄まじい炎が押し寄せた。

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