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十五、高見対ブラッド一号

 森の午後三時の空は、いつしか暗雲が出て真っ暗だった。

 自分に唯一効く武器を持ってこられてはまずいので、ブラッド一号はさっさと城の奥へ引っ込んだが、追手はすぐには動けなかった。敵の生みの親に後ろを取られたからだ。

「よくもまあ、人をずーっと無視してくれるよねえ」

 いつの間にか背後にいた桜庭凛博士がそう言って、高見の首を絞めあげた。いちおうサイボーグだから細木を折るくらいは楽にできる。

 が、その手は真横からチョップで叩き落された。顔をしかめて相手を見る凛。

「誰も無視なんかしてないわよ」と、後輩を救った榊エリはバイクの尻を蹴って走らせ、その背中に叫んだ。「先に行ってて!」


「まあ目の前でお涙頂戴が演じられてりゃ、私が割って入るのも野暮ってもんだからね」

 苦笑する凛と対峙し、空手の構えをするエリ。その顔はわずかに笑って見えた。

「あれがお涙頂戴? 大量殺人鬼のマッド・サイエンティストはオツムからして変ってるわね」

「我が子が育児に励んでいれば、母親冥利に尽きるってもんだよ」と、凛もグーで構える。だが、そのうちくるりと背を向けると、城の中へ入っていった。

 榊は電池切れで、チョップの手のまま停まっていた。




 城の奥に突入した高見にも危機が迫っていた。が、それは結果的には目指す敵の危機になった。バイクを運転中はレーザーを撃てない。後ろの砲手が必要である。敵を追い詰めたとて、降りて後ろに回るうちに飛びかかられてやられる確率しかない。実際、大時計の前まで来たブラッド一号が、きびすを返してこっちに向かってきたので、あわてて降りようとした。


 ところが、その必要はなかった。いつの間にか後ろに乗っていたメグが、レーザー砲の引き金を引いて撃ちだしたのである。飛んでくる破壊光線を、危うくよけながら叫ぶロボット。

「こらっメグ、やめなさい!」

 だが女は「だー、だー」と楽しそうにあちこちに砲撃するばかり。オツム幼女にとっては、破壊兵器もただのおもろいおもちゃである。

 ブラッド一号は、わりと当りそうになって右に左に逃げた。壁や床が切り刻まれ、城内は半ば廃墟と化した。「もうちょっとだ、頑張れ!」と後ろに叫ぶ高見に、メグは「あーい」と機嫌よく返事して、さらに獲物を狙う。当たるとブラッド一号が切断エンドだとは知らないので、ただなじみの親切なお兄さんと遊んでいるつもりでいる。


 だが、そのうち後ろから襟首をつかまれて連れ出された。不機嫌にぶー垂れるメグを床に置くと、すっ飛んできた白衣の魔女は、高見に手を出そうとした。だが、バイクはいきなりUターンし、彼女の胴体に乗り上げた。「ぐはあああ!」と叫ぶ桜庭凛博士の下半身を潰して、走る凶器は停まった。



 だが、どのみち敗北決定だった。バイクから降りた高見に近づくブラッド一号。

「いろいろお世話になりましたが、ここで殺します」

 そして手からサーベルを出すと、高見は疲れた目で、あきらめたように言った。

「いいよ、もう。これが、本来のあんただからね。あたしが惚れた心優しいあんたは、偽のあんただった。だから、もういい」

「納得いただけているようで、よかった」


 ところが、殺人マシンが刃を振り上げたそのとき、城の入り口付近で、どでかい音がした。(あ、落雷か)とマシンは気にしなかったが、その場所にいる者のことまでは把握していなかった。

 不意に目の前に黒い何かが飛び出した。膨大な電気を全身に食らって満タンになった榊エリ隊長が、ブラッド一号に突っ込み、顔面に拳を打ち込んだ。そのパワーはすさまじく、ロボットは数十メートルは吹っ飛び、大時計の上にあいた穴の向こうへ消えた。



「間に合ったわね」

 そう言う榊の顔に、高見は驚いた。そこには彼女が見たこともない、さわやかな微笑があった。なぜか胸が熱くなり、涙があふれて止まらなくなった。

 脇では座り込んだメグが、この惨事を面白がって、きゃっきゃとはしゃいでいる。

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