90 勇者、魔王ファッションに染まる!?
90 勇者、魔王ファッションに染まる!?
魔王ゼル=オルディスのまさかのファッションショー成功から数日後——
王都の街並みが異様な雰囲気を醸し出していた。
「……なあ、なんか最近、王都の住人が黒ずくめの服着てないか?」
「そやな……っていうか、みんなマントはためかせて歩いとるで……?」
カインたちが通りを歩くと、道行く人々がことごとく「魔王スタイル」に身を包んでいた。
黒いローブ、漆黒のコート、そして重厚なマント。
まるで町全体が魔王軍の拠点と化していた。
「……なんやこれ!? いつの間に王都が魔王の支配下みたいになっとるんや!!」
「……最近、“魔王風コーデ”とか流行ってる」
「流行るにもほどがあるだろ!!!?」
そんな状況の中、カインたちはふと王城前の広場に足を踏み入れた。
すると——
広場の中心には、大勢の人々が集まっており、何やらステージが設置されている。
「ん? なんだ、またファッションショーでもやってんのか?」
「いや……なんか……雰囲気が変やで……?」
次の瞬間——
「皆の者!! 我が新たな姿を見よ!!!」
ドン!!!
王城のバルコニーから、金色の光とともに登場したのは……勇者ヴェルトだった。
「……」
「……」
「……」
「……」
漆黒のロングコート、ダークレッドのインナー、そして背中には豪奢な黒銀のマント。
その姿はまさに「光の勇者」ではなく、「影の支配者」。
「お前、どうした!?!?」
勇者ヴェルトが笑う。
「ふっ……気づいてしまったのだ、カインよ……」
ヴェルトは優雅にマントを翻し、得意げな表情で続けた。
「魔王スタイルこそ、真の高貴なる者の装いであると!!!」
「いや、どこでそんな結論に至ったんだよ!!!?」
あたりの貴族がささやく。
「勇者様……あまりにお美しい……!」
「これが……魔王のようでありながら、勇者でもあるという“ハイブリッドスタイル”……!」
「おいおいおいおい!!! うちの親父、そんな影響力あったんか!??」
「これはもう……文化の侵略やな……」
「……魔王、恐るべし……」
そして——
勇者ヴェルトの一言が、さらなる混乱を引き起こした。
「……よって、今後、王都の兵士の制服も魔王スタイルに統一する!!」
「待て待て待て待て待て!!!!!」
兵士たちも……。
「さすが勇者様!!!」
「これで我々も高貴なる魔王スタイルに……!!」
「いや、お前ら、誇るとこそことちがうだろ!!?」
——こうして、王都は完全に「魔王ファッション」に染まり、
魔王ゼル=オルディスは知らぬ間に「ファッション業界の支配者」となったのだった——。




