88 魔王、ファッションショー出演決定!?
88 魔王、ファッションショー出演決定!?
市場のど真ん中で、カインたちは信じられないものを目の当たりにしていた。
魔王ゼル=オルディス——それは世界を震撼させる恐怖の支配者。
しかし、今の彼は……ツノをおしゃれにキメた広告塔。
《魔王ゼル=オルディス、決めポーズで微笑む!》
《キャッチコピー:「あなたも魔王にならないか?」》
「……もう、何もかもが訳わからん……」
「親父、ほんま何しとんねん……!!!」
「なんやろ、めっちゃ悪そうな顔してるのに、背景のピンクのハートが違和感しかあらへん……」
「本当に魔王が許可したの?」
ダリオ・ゴールドマン(魔王ブランド公式広報)は、満面の笑みでポスターを掲げると、得意げに言った。
「ええ、もちろん! なんと魔王様直々に次のファッションショーへの出演も決定しました!!!」
「……はい???」
「親父が……ファッションショー……?」
「いや、魔王さんって本来、そういうことする立場やないやろ!?」
ダリオは自信満々に頷いた。
「ふふふ、驚きましたか? 魔王ブランドの戦略の一環として、『魔族のカリスマ性を一般層にもアピールする』 ため、次回の王都ファッションショーに魔王様がモデルとして登場されます!」
「いやいやいやいや、いくらなんでも無茶苦茶だろ!! そもそも魔王が王都でモデルやるとか、絶対騒ぎになるじゃん!!!」
「せやな、うちのおとんでも、王都に行ったら即座に勇者勢力に包囲される可能性あるし……」
「そこが新時代の幕開けなんですよ!!!」
「どこがだよ!!!」
ダリオは得意げにポーズを決め、演説を始めた。
「これまで魔王軍と人間の国々は長年対立してきた。しかし! これからは戦争ではなく、ファッションの力で新たな時代を築くのです!!」
「いや、何でいきなり平和的な解決をファッションでやろうとしてんだよ!」
「……でも、もしホンマに成功したら、戦争なくなるんちゃう?」
「……なるかい!!」
「魔王、そんなノリでいいの」
そのとき——
バリバリバリッ!!!
突然、空間が裂けるような音が響いた。
次の瞬間、黒い魔力の奔流が巻き起こり、どこからともなく威圧感たっぷりの低い声が響く。
「……ダリオよ、貴様の計画は順調か?」
「うわぁぁぁぁぁ!!!! 本物の魔王やぁぁぁぁ!!!!」
突如として現れたのは、魔王ゼル=オルディス本人だった。
——黒いマントを翻し、堂々とした姿で降り立つ魔王。
——圧倒的な威圧感、異様な存在感、闇のオーラが辺りを包む。
「ちょっ……ホンマに来てしもたん!??」
「魔王が市場に降臨しないで」
「親父、ほんまに何やっとんねん!!」
しかし——
魔王は静かにダリオを見つめると、低い声で言った。
「……撮影用の新衣装は、ちゃんと用意できているのか?」
「いや、お前、そこかよ!!!!!!!!!」
「もちろんです、魔王様! 次のファッションショーでは、特製の“魔王ロイヤルスーツ”をお召しいただきます!」
「ふむ、ならば良い。私はモデルとして最高の姿を見せねばならんからな……」
「……いや、どんなノリやねん!!!」
「勇者とか帝国軍とかの問題より先に、魔王のファッション意識が高すぎることのほうが問題だろ!!!」
「むしろカインもモデルやったら?」
「断る!!!!!」
市場に集まった人々は、「魔王がファッションモデルデビュー」との噂を聞きつけ、大騒ぎになった。
そして数時間後——
王都の貴族社会では、「魔王が最新ファッションの最前線に立つ」という衝撃のニュースが駆け巡ることになるのだった……。




