85 魔王のツノ、大ブーム到来!?
85 魔王のツノ、大ブーム到来!?
——数日後。
カインたちは、ふらりと市場に立ち寄っていた。
賑やかな通りには、行き交う人々の楽しげな声が響いている。
「いやぁ、魔王城でのあの騒動から数日だけど……今度こそ、ゆっくり買い物ができそうだな!」
「せやなぁ。今回は変なもん見つからへんことを祈るわ」
「まあ、ウチはまたおもろいもん見つけたら買うけどな!」
「さっさと買い物済ませる」
そんな雑談をしながら市場を歩いていると、ひときわ人だかりができている店を発見した。
布製の派手な看板が掲げられている。
【話題沸騰! これを持てば魔族の王威を宿すことができる!? 限定販売! 「魔王のツノアクセサリー」】
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「ちょっと待てや!!!!」
思わずツッコミを入れながら、カインたちは店の前に駆け寄った。
店頭には、様々なアクセサリーがずらりと並べられている。
指輪、ネックレス、ブレスレット、髪飾り……
すべての中心には、あの黒いツノの欠片が埋め込まれていた。
「なんだこれぇぇぇぇぇぇ!?!?」
店主の男が、得意げに説明を始める。
「お客さん、これは今話題の“魔王のツノ”を使ったアクセサリーですよ! 身に着けることで、魔王のカリスマを得られると言われてます!」
「は、はぁ!? そんなご利益、ほんまにあるん?」
「もちろんですとも! 魔王ゼル=オルディスのツノですよ!? しかも、正真正銘の本物!!」
「いや、それ生え変わりの抜け殻やで」
「えっ?」
「そもそも、なんでこんな大量に出回っとるんだ……?」
「……まさかとは思うけど、前にツノを売ってたあの怪しい魔道具店が関わってるんやない?」
「……ありえるなぁ」
すると、近くの客が話している声が聞こえてきた。
「これさ、持ってるとちょっと強くなった気がするんだよな!」
「俺は付けてたら、なぜか威圧感が増したって言われたぜ!」
「なんか……夜中になると、ツノがほんのり光るんだけど……」
カインが思わず声を漏らす。
「……え?」
ルナは、不審そうに眉根を寄せた。
「ツノが光る?」
カインたちは、実際に売られているツノアクセサリーを手に取ってみた。
その瞬間——
ツノが微妙に震えた。
「……いや、これ、まだ魔力残っとるじゃん!!」
「ただの抜け殻じゃない……」
「……あかん、親父の魔力が微妙に宿ったままや!!」
「つまり……」
「これ、夜中に“魔王の威圧感”が勝手に発動しちゃうんじゃないか!?」
「やっかいなアクセサリー……」
その時、突然——
ピピピピピッ!
「……ん?」
「あ、ちょ、これ親父からの直通通信や!!」
「えぇ!? なんでこんなタイミングで!?」
カインは、魔王から渡されていた魔法通信機(通称:魔王ホットライン)を取り出した。
そして、通話ボタンを押した瞬間——
『貴様ら……これは、どういうことだ……?』
「ひぃぃぃぃぃ!!!?」
——市場の一角で、カインたちの悲鳴が響き渡った。
魔王のツノブーム。まさかの魔王本人からクレーム発生であった。




