84 魔王ゼル=オルディスに報告! でも何か様子が……!?
84 魔王ゼル=オルディスに報告! でも何か様子が……!?
魔王のツノを取り戻したカインたちは、一路、魔王城へと向かった。
——魔王城は、巨大な黒曜石の城壁に囲まれ、空には常に紫色の雷雲が渦巻いている。
門番の魔族たちは、カインたちの姿を見るなり緊張し、一歩後ずさった。
「お、おい……アイツ、“何度死んでも強くなる”って噂の人間やろ……?」
「しかも、イリス様まで一緒やぞ!? 何事や……」
魔族兵Aと魔族兵Bが恐る恐る話していると、イリスが気軽に声をかける。
「ちょっと通るでー!」
魔族兵たちは慌てて門を開いた。
「……魔王城って、もっと物々しい感じかと思ってたけど、意外とすんなり入れるんだな」
「それだけイリスの影響力が強いってこと」
「それか……もしかして、ゼル=オルディスさん、めっちゃ気難しいタイプなんやない?」
「え? どういうこと?」
「上司が厳しいと、部下ってなるべく余計な報告したないやろ?」
「……なるほど、社会の闇だな」
——そして、謁見の間の巨大な扉が開かれる。
中に足を踏み入れた瞬間、圧倒的な威圧感が襲いかかってきた。
玉座の上——そこに座るのは、魔王ゼル=オルディス。
長い銀髪に、鋭い金色の瞳。
まるで星々を封じ込めたような黒の法衣をまとい、威厳に満ちた雰囲気を放っている。
そして、その額には——
魔王のツノが、ない
(……ん?)
カインは目を凝らして確認した。
魔王の額には、本来あるべきツノが……なかった。
(おや……?)
(……おやおや……?)
(……これは……)
(……察し……)
「……」
魔王は何も言わず、ただカインたちを見据えている。
「……えーと」
カインは、背中の袋から「魔王のツノ」を取り出し、そっと掲げた。
「……これ、もしかして……アナタのものですか?」
ゼル=オルディスが無言で睨む。
「……」
ゴゴゴゴゴゴゴ……!!!!
——場の空気が一瞬で重くなった。
ゼル=オルディスの背後に漆黒の魔力が渦巻き、まるで嵐の前触れのように空間が歪み始める。
(あ、これ……親父、ガチでキレとる)
(ヤバい、早よ謝らな)
(最悪、この城ごと吹き飛ぶかも)
——しかし。
「……」
ふぅ、と魔王は一つため息をつき、胡散臭い思いっきりの笑顔を見せる。
「カイン・レヴェナント!」
「は、はいっ!!」
「……すまない。私のツノを拾ってくれたことに、礼を言おう」
「えっ、あ、いえ、ど、どういたしまして……?」
カインは混乱しながらも、ツノを魔王へと差し出した。
——しかし、魔王は受け取らない。
「……それはもう、私のものではない」
「え?」
「……あの、親父? どういうことや?」
「……そのツノは、“抜け落ちた”ものだ」
「……抜け落ちた?」
「まさか……魔王のツノって、生え変わるの!?」
「……そうだ」
「「「えええええええええ!?!?」」」
「え、ちょ、待って!? じゃあこれ、別に盗まれたとかじゃなくて、ただの……抜け殻!?」
「その通りだ」
「……親父、今まで黙っとったけど、それ普通にヤバない?」
「……」
魔王は微妙な表情で目を逸らした。
「……ええと、つまり」
ルナは慎重に言葉を選びながら、確認するように尋ねる。
「ゼル=オルディスさんのツノは、一定周期で勝手に抜けて……新しいのが生えてくる、ってことですか?」
「……そうだ」
「生え変わるんかーい!!!!」
「つまり……」
「ワイの親父、魔王やのに“ツノの抜け替わり時期”があるんかい!?!?」
「……」
魔王は無言で、額を覆った。
(……なんか、ちょっと気の毒になってきた)
(こんな壮大な勘違いで、魔王さんの威厳がダメージ受けてはる……)
「いや、待て待て! ってことは、このツノ、ウチが持って帰ってもええん?」
「……好きにしろ」
「やった!! これでワイのコレクションに“親父の抜け殻”が追加や!!」
「いや、持ち帰るんかい!!」
「でもまぁ、結果的には丸く収まったんじゃないか?」
「魔王に消されなかっただけ幸運」
「……」
「……あの、大丈夫ですか?」
「……………」
ゼル=オルディスが俯いて、
「しばらく一人にしてくれ……」
——こうして、魔王のツノ騒動は幕を閉じた。
しかし、カインたちはまだ知らなかった。
後日、魔王の抜けたツノが“神聖な遺物”として市場で高値で取引されることになることを——!!




