8 これが……初めての女の子の膝枕……!?
8これが……初めての女の子の膝枕……!?
「――んぐっ……!?」
目を覚ました瞬間、俺は猛烈な頭痛に襲われた。
「いてぇぇぇぇぇぇぇ!!? 頭割れる!!」
「おお、気ぃついたんか? いやぁ、ほんまに避けられへんかったなぁ」
目の前にはルナの顔。そして――
「……え?」
俺の頭は、何か柔らかいものの上に乗っていた。
「ひ、膝枕……!?」
「ん? ああ、せやで」
ルナはケロッとした顔で答える。
「え、なんで!? 俺、さっきまでボコられてたのに!? なんでこんなご褒美みたいな展開に!?」
「だって、カイン、めっちゃアホみたいにぶっ倒れたんやもん。ほっといたら死ぬかと思ってなぁ」
「いや、実際死んでるんですけど!!!」
「ええぇぇ!? まじで死んどったん!?」
ルナが驚きで目を丸くする。
「いや、もう普通にスキルで蘇生したからいいんだけど……ていうか、俺の頭、めちゃくちゃ痛いんだけど!?」
「そらそうやろ、うち、めっちゃ手加減したつもりやったけど、ちょっとだけ本気出してしもたし」
「ちょっとだけ!? あの威力でちょっとだけ!? どんな怪力だよ!!」
俺は恐る恐るルナを見上げた。
(やばい……可愛い顔して、こいつ、完全にモンスター級の強さじゃねぇか……)
ルナは俺の髪をくしゃくしゃっと撫でながら、ニコッと笑う。
「まぁでも、カイン、死んでも生き返るんやったら、ある意味最強やんな!」
「その言い方、すごい不穏だからやめて!!」
「せや、カイン! せっかく生き返ったんやし、お詫びに特製おにぎりあげるわ!」
「おおっ!? それは嬉しい!!」
ルナが懐からゴソゴソと何かを取り出し、俺の目の前に差し出した。
「ほれ、うち特製の【スライムおにぎり】や!」
それは言うまでもないが、スライムでできたおにぎり型の物体だった。
「待て待て待て待て!!!」
俺は全力でのけぞった。それくえるの??
「スライムおにぎり!? なんだその狂気のメニュー!!?」
「いや、スライムってなぁ、意外と栄養あるんやで? しかもぷるぷるで、ええ感じに炊けるんや!」
「嘘だろ!? それ、食って大丈夫なやつか!? ってか、炊くって何!? なんか調理法すごくない!?」
「ふふん、食わず嫌いは損するで?」
ルナはおにぎりをぐいぐいと俺に押し付ける。
「お、俺は遠慮しておくよ……!」
「……ほな、しゃーない。うちが食うわ」
ルナはパクリと自分でスライムおにぎりを食べた。
「ん~~~! うん、ぷるぷるで美味い!」
「……マジで!?」
「せやで! ほな、カインも食うか?」
俺はゴクリと唾を飲み込む。転生してからというもの、まだ何も食べてない。腹が減ってないと言ったら嘘になる。てか、かなり減っていた。
(ここで食えたら、一人前の異世界人になれる気がする……!!)
意を決して、おにぎりを手に取った。
「……いくぞ……!」
(うおおおおお!! これが異世界の食い物! 俺の異世界ライフが今、ここから始まる――!!)
パクッ!!
「……」
「……」
「――うわあああああああ!!! ぷるぷるしてるぅぅぅ!!!」
俺は盛大に転がりながら悶絶した。
ルナはそんな俺を見て、めっちゃ楽しそうに笑っていた。