72 異世界ラッキーデー、終わる気配なし!?
72 異世界ラッキーデー、終わる気配なし!?
「いやもう、いい加減にしてくれ!!!」
カインは思わず天を仰ぎながら叫んだ。
黄金の食券——それはこの街にある最高級レストランで一生タダで食べられるという、もはや夢のような特典だった。
だが、これまでの奇跡的なラッキーを考えると、さすがに不安しかない。
「なんか裏があるんじゃないか……?」
カインは震える手で食券を眺めた。
ルナはジト目でカインを見つめる。
「カイン、うちのことも誘ってくれるんやろな?」
「え、いや、まぁ……うん……?」
イリスは腕を組んで頷く。
「ワイも行くで! 高級レストラン、一生タダ!? 最高やん!」
フェリシアはため息をつきながら、「……ここまでくると、むしろ何かの罠を疑いたくなる」と眉をひそめる。
カインも心の中で同じことを思っていた。
(俺、いつか爆発四散するんじゃないか?)
そんな不安を抱えながらも、せっかくの機会を逃すのは惜しい。
「……じゃあ、とりあえず、行ってみるか?」
カインがそう言うと、ルナ、イリス、フェリシアの目が輝いた。
⸻
黄金の食券を片手に、カインたちは街の中心にある豪華なレストランへと足を運んだ。
その建物は、異様にデカかった。
「……いや、なんかデカすぎない?」
カインが思わず口に出してしまうほど、そのレストランはまるで城のような外観をしていた。
白を基調とした豪奢な装飾に、大理石の柱。入り口には執事風の男性が二人も控えている。
イリスが感心したように口笛を吹く。
「おお〜、これは本物の上級貴族しか入れへん雰囲気やな!」
フェリシアも少し驚いた様子で、「……こんな場所、帝国の貴族でも滅多に入れない」と呟いた。
カインはゴクリと唾を飲み込みながら、一歩前に出た。
執事の一人が、恭しくお辞儀をする。
「ご来店、誠にありがとうございます。ご予約の——」
「いや、俺予約とかしないんだけど」
「……え?」
「だけど、これ持ってる」
カインは黄金の食券を取り出し、執事に差し出した。
その瞬間——
バンッ!!!
「!?!?」
突然、執事が地面に膝をつき、深々と頭を下げた。
「せ、聖なる黄金の食券……っ!!」
「え、そんな神々しいもんなん!?」
カインの困惑をよそに、もう一人の執事も同じく跪き、完全に崇拝モードに入っていた。
「これは……長年、伝説とされていた食券……」
「まさか、本当に持つ者が現れるとは……っ!」
「俺、ただの一日領主だったんだけど!?」
ルナとイリスは目を見合わせながら、「なんか思ってたのと違う展開やな……」と苦笑する。
フェリシアは冷静に「やっぱり、ただの食券じゃなかった」と呟いた。
執事たちは震えながら立ち上がり、異様なほどの丁寧さでカインたちを店内へと案内した。
中に入ると——
キラッキラのシャンデリアが天井からぶら下がり、床は赤い絨毯。高貴な音楽が優雅に流れ、メイドや執事が整然と立ち並んでいた。
「なんだこれ……王宮じゃん……」
カインは完全に圧倒されていた。
席に案内されると、すぐにメイドたちが次々と料理を運んでくる。
「こちら、本日の前菜でございます!」
「最高級のドラゴンステーキでございます!」
「伝説の海底神殿で採れた真珠スープでございます!」
「俺、なんかとんでもないことになってる……」
ルナは嬉しそうに料理を見つめ、「せっかくやし、ありがたくいただこか♪」とナイフを手に取る。
イリスは興奮しながら「うっわー! これ絶対うまいやつやん!」と大喜び。
フェリシアは静かにスープを一口飲んで、「……美味しい」と珍しく感情を表に出した。
カインも恐る恐るステーキを一口食べてみる。
——その瞬間、衝撃が走った。
「んっ……!? う、うまああああああああああ!!!!!」
思わず叫びそうになったが、なんとか堪える。
(な、なんだこれ!? 肉が口の中で溶ける!! こんなうまいもん、今まで食ったことないぞ!?)
しかし、その時だった——
執事が突然、すっと近づいてきて、静かに告げる。
「お客様、大変申し訳ありませんが——」
「え? まさか無料じゃないってオチやないよねえ?」
「いえ、そのようなことはございません。ただ……」
執事はさらに顔を近づけ、神妙な面持ちでこう言った。
「この店で『黄金の食券』を使った者は、記録上誰一人として生きて帰っていないのです……」
「はあああああああああ!?!?」
カインは思わずフォークを取り落とした。
ルナ、イリス、フェリシアも凍りつく。
「いや、えええ!? どういうことやねん!?」
「何かしらの呪いでもあるんか!?」
「……もしくは、食券の所有者を狙う者がいるのかも」
(いやいや、俺ただの食いしん坊でここ来ただけなのに、命の危険とかやめてくれよ……!)
カインは戦慄しながら、黄金の食券を見つめた。




