71 カイン、一日限定領主になる!?
71 カイン、一日限定領主になる!?
「……え?」
あまりにも唐突すぎる報告に、カインは一瞬フリーズした。
「お兄さん、当選おめでとうございます!」
目の前には、立派な衣装をまとった街の役人らしき男が、満面の笑みで手を差し出していた。
「ええと……すんません、俺が何に当選したって?」
「この街では、開拓祭の特別イベントとして、『一日限定領主』を毎年抽選で選んでいるんです! 昨日、宿の宿泊者全員が自動応募されまして、あなたが見事に当選しました!!」
「また宿かい!!?」
カインは思わず頭を抱えた。
ルナは苦笑しながら、「カイン、もう認めたほうがええんちゃう?」と肩をすくめる。
イリスは爆笑しながら「うっわー、アンタどこまで運がええねん!」とお腹を抱えて笑っていた。
フェリシアは相変わらず冷静だったが、「……もはや奇跡を通り越して異常事態」と眉をひそめる。
「で、一日限定領主って……何すんの?」
「簡単です! 一日だけ領主になって、自由に街を視察したり、イベントに参加したり、時には簡単な命令を出したりできます!」
「いや、それもうただの本物の領主やん!」
「もちろん、正式な決定権は本物の領主様が持っておられますが、お祭りの一環として市民との交流を楽しんでもらう形になります!」
「いやいや、俺、そんな偉そうなことをできる性格じゃないんだけど……」
しかし、役人の勢いは止まらない。
「それでは早速、こちらへ!」
こうしてカインは、強制的に一日領主の座に就くことになった。
⸻
まず連れてこられたのは、街の中央にある立派な領主館だった。
「おお……意外とちゃんとした場所だな」
「当然です! 領主様が普段お使いになられている建物ですから!」
「え、ちょ、待て!? ほんとにここ使っていいの!?」
「ええ、もちろんです!」
「こんなん絶対俺みたいなやつが入る場所と違うだろ……」
すると、執事らしき人物がすっと近づいてきて、カインに深々とお辞儀をした。
「ようこそ、一日領主様。本日は何なりとお申し付けください」
「えぇ……?」
カインが戸惑っていると、ルナがクスクス笑いながら「カイン、せっかくやし楽しんだらええんちゃう?」と肩を叩く。
イリスは面白がって「ええやんええやん! せっかくやし、なんか無茶な命令してみたら?」と悪ノリしてくる。
フェリシアはため息をつきながら「……無茶、しないで」と冷静に釘を刺した。
「しゃーない、じゃあ、適当にやるか……」
⸻
まず最初にやらされたのは、市場の巡回だった。
「領主様、こちらで市民の皆様と交流を——」
「ちょ、おれ普通の人間なんだけど!?」
しかし、商人たちは一斉にカインのもとへ詰め寄った。
「領主様! ぜひうちの特製パンをお試しください!」
「こちらの特製チーズも絶品ですぞ!」
「この町の名産、虹色果実のジュースはいかがですか!?」
「いや、俺まだ何もしてないのにめっちゃもてなされてる!!?」
「ふふ、良かったなぁ
「うちも領主になりたかったわー!」
「……平和すぎる」
結局、カインは試食だけでお腹いっぱいになるという、奇妙な領主体験をしたのだった。
⸻
「さぁ、次は領主としての決断を下すイベントです!」
「え、おれ、決断とかしなきゃいけないの?」
「ええ、もちろんです! 例えば——」
① 市場の税率を少し下げる(市民歓喜!)
② 街の警備を強化する(治安向上!)
③ 祭りの開催時間を延長する(皆ハッピー!)
「え、ええと……」
カインは軽く悩んだが、結局——
「じゃあ、祭りの時間延ばそうかな」
「おおおおお!!!」
市民たちは大歓声を上げ、ますます祭りは盛り上がっていく。
「カインらしい選択やなぁ」
「ええやん! ワイももっと楽しめるし!」
「……まぁ、悪くはない」
そして、カインの「一日限定領主」のイベントは、無事に大盛況のうちに終了した——。
⸻
しかし、ラッキーはまだ終わらない!?
「ふぅ……やっと終わった……」
カインが宿に戻ろうとした、その時——
「領主様! ささやかながら、記念品をご用意しました!」
「え、マジで? 何くれるん?」
「こちらです!」
渡されたのは——
『領主特製・黄金の食券(高級レストランで一生無料)』
「……マジで言ってる?」
「う、うちも欲しいわぁ……」
「ウチは嫉妬するで!!」
「……ここまで来ると、本当に異常」
カインは心底思った。
「もういいて!!! ほんとに怖くなってきたぜ!!!」
果たして、カインのラッキー連鎖はどこまで続くのか——!?




