70 異世界屋台巡りの翌日! カイン、奇跡のラッキーデー!?
70 異世界屋台巡りの翌日! カイン、奇跡のラッキーデー!?
市場での夜が明け、朝日がゆっくりと異世界の街を照らし始める。昨夜の喧騒が嘘のように、静かで清々しい朝。
カインはいつも通りの調子で伸びをしながら、のそのそと宿のベッドから起き上がった。
「ふぁ〜……昨日はよく食べ歩いたなぁ」
窓を開けて外の空気を吸い込み、爽やかな朝を満喫する。すると
「あっ!? あなた、昨日の幸運ゼリーを食べた人ですね!?」
突然、宿の前で待ち構えていたかのような商人が、目を輝かせてカインの手を握りしめてきた。
「え、なに? 俺、なんかした?」
「おめでとうございます! 昨日、宿の抽選会がありまして……あなた、一等賞に当選しました!!」
「は???」
カインは一瞬で目を覚ました。
「え、なんか俺、そんな抽選参加してたっけ?」
「いえ! 宿に泊まった人全員に自動で応募資格があったんです!」
「え、マジで? で、一等賞ってなに?」
「宿泊代が無料! さらに、食べ放題サービス付き!」
「えええええええ!!?」
後ろで話を聞いていたイリスが目を丸くする。
「ちょ、待てや! こんなことってある!? アンタ昨日のゼリー、ほんまに効果あったんちゃう!?」
「ま、まさか……たまたまだろ?」
カインはそう言いつつも、内心ちょっと驚いていた。
——しかし、幸運はこれだけでは終わらなかった。
「お兄さん、ちょうどいいところに!」
目の前にいたのは、一見普通の服屋の店主。しかし、彼の手には見たこともないほど上質な漆黒のマントが握られていた。
「今日、この街では開拓祭をやってましてね。記念に特別な品をプレゼントしてるんですよ!」
「へぇ、そんなんやってんのか……」
カインは何気なくマントを受け取った。生地は驚くほどなめらかで、手触りが良い。しかも、よく見ると魔法の刺繍が施されており、明らかに高級品だった。
「……ちょい待ち。これ、もしかしてとっても高いやつじゃない?」
「ははは、まぁ多少は高級品ですが、記念品なので気にしないでください!」
店主は爽やかに笑って去っていった。
「……え、俺、タダでこんないいもんもらっていいのかな?」
「ふむ……これ、普通のプレゼントちゃうで。カイン、やっぱり運気が上がってるんちゃう?」
「ずるいわー! うちもなんかもらいたい!」
カインは首をかしげながらも、マントを肩にかけ、そのまま市場を進んでいった。
次に訪れたのは武器屋。
店の中には冒険者向けの剣や防具がずらりと並んでいる。カインは軽く見て回っていたが、ふと目に入ったのは壁に飾られた一振りの剣だった。
刃は光を反射して鈍く輝き、柄の部分には細かな装飾が施されている。いかにも上質な剣という雰囲気を醸し出していた。
「お兄さん、いい目をしてるね!」
突然、店主がカウンターの向こうから顔を出した。
「それ、今日の特別セール品なんですよ。なんと、お兄さんにはタダでお譲りします!」
「は???」
またしても予想外の言葉に、カインは思わず耳を疑った。
「いやいや、武器屋でタダってどういうことなの!」
「実は今日、開店記念日でしてね。最初に入ってきたお客さんにプレゼントしようと思ってたんですよ!」
「……マジで?」
「ええ、マジです!」
カインはおそるおそる剣を手に取った。持ちやすく、しっかりとした重みがある。実際に振ってみると、バランスが良く、まるで自分の手に馴染むようだった。
「……いや、こんな良い剣もらっていいのかな……?」
「もちろんですよ! ぜひ使ってください!」
カインは何とも言えない気分で剣を受け取り、店を後にした。
そして、極めつけの出来事が起こる。
市場の通りを歩いていると、道の片隅にポツンと置かれた財布が目に入った。
「おいおい、今度は財布かよ……」
カインは苦笑しながら拾い上げ、中を確認する。すると、中には金貨がギッシリ詰まっていた。
「うわっ、メチャクチャ入ってる……!」
これを黙って持っていくわけにはいかない。カインは近くの店主に尋ねながら、落とし主を探し始めた。
「すんませーん、誰か財布落とした人いませんかー?」
すると、数分もしないうちに慌てた様子の貴族風の男性が飛んできた。
「ああっ! それは私の財布です! ありがとうございます!」
「いやいや、大事なもんなんだから、ちゃんと持てないと……」
カインが財布を返すと、男は感激した表情で両手を握りしめた。
「お礼をさせてください!」
「いや、別にいらないよ?」
「良い人だー、あなたはほんとに良い人だ。これは受け取ってください!」
そう言って渡されたのは、なんと財布の中の金貨まるごとだった。
「えっ!? 嘘、中身全部くれの!?」
「感謝の気持ちです! あなたの本当の善良さはこの世の宝だ!」
男はカインに金貨を握らせるとニコニコしながら去っていった。
カインは手の中の金貨を見つめて呟いた。
「おいおい、こんなことあっていいのか? 俺、ちょっと怖くなってきたぞ……」
ルナは腕を組んで首をかしげる。
「カイン、ホンマに昨日のゼリーの効果ちゃうん?」
「いや、ただの偶然だろ!?」
フェリシアは冷静に推測する。
「……確率的に、偶然としては不自然」
イリスもジト目でカインを見てくる。
「正直、これ以上ラッキーが続いたら、ワイら嫉妬するで?」
カインは冷や汗をかきながら、再び市場へと足を運ぶことにした。
「よし、あの屋台のオッサンに確認しに行こうか!」
——だが、そこには驚くべき光景が広がっていた。
『珍味コーナー』の屋台が、跡形もなく消えていたのだ——。
「な、ない……!?」
カインは唖然とする。
「昨日のオッサンどこ行ったんだ!!」
周囲の店主に聞いても、誰もその屋台の存在を知らないという。
「ちょ……ホンマにあのゼリー、何やったん……? まさか……カイン、呪われてるんちゃう?」
ルナが心配そうに眉を顰める。
「いやいや、呪いどころか大当たりやん! ワイも食えばよかったわ!」
「続きすぎる幸運、逆に怖い」
確かに、ここまでラッキーが続くと、逆に何か大きな不幸がやってくるのでは……? そんな嫌な予感がカインの背筋をゾワリと駆け抜けた。
「……とりあえず、今日は慎重に動こか……」
そう決めた矢先——
「お兄さん! おめでとうございます!! この街の『一日限定領主』に当選しました!!」
「いや、だから俺、いつ何に応募したんだよ!!!!」
——カインの異世界ラッキーデーは、まだまだ終わらない。




