66 深夜の攻防戦!? フェリシアの試練(続き)
66 深夜の攻防戦!? フェリシアの試練(続き)
──カインの必死の叫びが、静かな夜に響き渡った。
「……さっき、何もしないって言った?」
フェリシアがじとっとした目でカインを見下ろしている。手には小さな短剣。刃が月明かりを反射し、妙にギラついて見えた。
「いやいやいや! 俺、ほんとに何もしてないから! ただの寝相だ! そんなんで刺されたら、たまねー!」
カインは布団をバッとめくり、完全に防御態勢。
「……言い訳としては、まぁ、ギリギリ合格」
「合格ってなんだよ!?」
フェリシアは短剣をすっとしまうと、再び布団に潜り込んだ。
「……まったく、安心して寝られないわ」
「それこっちのセリフだ!! こっちは命懸けで寝てるんだぞ!!」
カインは盛大に嘆きつつも、仕方なく再び横になる。
──数分後。
部屋は再び静けさを取り戻し、今度こそ平和な夜が訪れるはずだった。
「……ん?」
しかし、カインはふと違和感を覚える。
(なんか……隣から、妙にこっち向いてる気配がする)
うっすらと目を開けると──
案の定、フェリシアがじーっとこちらを見つめていた。
「お、おい……なんでこっち見てんの……?」
「……いや、別に……その……」
フェリシアはもごもごと口ごもり、わずかに目を逸らした。
「……なんか、お前が急に動かないか監視してるだけ」
「いや、怖いわ!! もうそれ、寝る気ないじゃん!!」
「ち、違う! これはあくまで警戒のため……!」
「もういい!! ほら、お前もちゃんと目ぇ閉じろ!! いいから寝ろ!!」
「……うぐ……」
カインにジト目で睨まれ、フェリシアは仕方なく目を閉じる。
──数分後。
「…………」
「…………」
「……すぅ……」
(……ようやく寝たか)
カインは小さく安堵のため息をつき、今度こそ完全に眠りにつこうと目を閉じた。
──が。
「……むにゃ……」
突然、フェリシアの寝言が聞こえた。
「……強い……バカ……でも……なんか……」
「ん?」
カインは思わず薄目を開けると、フェリシアは無防備な寝顔を晒していた。
「……んん……やめ……へんなこと……するな……」
「いや、どんな夢見てるんだ!!?」
カインは心の中で全力ツッコミを入れたが、さすがに口には出さなかった。
「……はぁ、やれやれ」
そっと頭を掻きながら、今度こそ深く息を吐く。
(まぁ、なんやかんやで一緒に旅する仲間なんだ……そのうち慣れるだろ)
そう思いながら、カインはようやく本気で眠りに落ちた。
──翌朝。
「……おはよ」
「……ん?」
目を覚ましたカインが横を向くと──
フェリシアが、完全に密着していた。
「…………」
フェリシアの手がカインの腕に絡みつき、さらには脚までもが絡まっている。しかも、顔をほんの少しカインの肩に乗せている。
「……ちょ、おい、これは……」
カインは顔を引きつらせながら、恐る恐るフェリシアを揺すった。
「おい、フェリシア? 起きろ?」
「……ん……」
フェリシアは少し眉をひそめ、もぞもぞと身じろぎする。
「……んん……なに……?」
「いや、お前……めっちゃくっついてるじゃん」
「…………」
フェリシアはぼんやりした目でカインを見つめた後、状況を理解した。
「…………っっっ!!!!?」
次の瞬間、バネのように飛び跳ねた。
「な、ななななななっ!? い、いつの間に!?」
「いや、それはこっちのセリフだ!! 俺、ほんとに何もしてないからな!?」
「~~~~っっ!!!?」
フェリシアの顔が、一瞬で真っ赤になる。
「ち、違うの! これはその……無意識で……! そ、そんなはずは……!!」
「いや、めっちゃガッツリ腕抱えてたけどな!? しかも脚まで!!」
「ち、違う!! これは……!」
フェリシアは混乱しながら言い訳しようとするが、言葉が詰まる。そして次の瞬間、
「……わ、忘れてー!!」
バッ!!
布団を引っ剥がして、フェリシアはその中に潜り込んだ。
「……いや、忘れろって言われてもなぁ……」
カインは呆れつつも、ため息をついた。
(……まぁ、昨夜は散々警戒してたのに、結局こうなるのか)
呆れつつも、どこか微笑ましさを感じるカインだった。
──こうして、フェリシアの「深夜の攻防戦」は幕を閉じたのだった。




