61 暗殺者、初めての買い物
61 暗殺者、初めての買い物
フェリシアが仲間になり、カインたちは次の街へとやってきた。
ここは 商業都市ローレン。
大通りには屋台が並び、人々が活気にあふれている。
「うおおお! 久々の街だ!」
カインは 財布を片手に大はしゃぎ だった。
「ほら、ちゃんと買い物リスト通りに食材を買うんえ」
ルナが 母親のような顔で釘を刺す。
「分かってるって!」
「ほんまかいなぁ……」
ルナは じと目 になったが、カインは気にせず市場へ突撃する。
そして――
「フェリシア、アンタ買い物とかしたことあるん?」
「……昔は、必要なものは任務の支給品だったし……」
フェリシアは きょろきょろと市場を見渡す。
「なるほどな。じゃあ、今日はお嬢様の初めてのお買い物体験ってわけや!」
イリスが にやりと笑う。
「は? そんな大げさな――」
「なら試してみる? ほら、あの果物屋で“これください”って言ってみ?」
「……そんな簡単なことで……」
フェリシアは ため息をつきながら 果物屋に向かった。
しかし――
「……」
「……?」
「……何を言えばいいの?」
「えぇ!? そこから!?」
イリスが 目を丸くする。
「普通に“リンゴをください”でええんや!」
「り、リンゴ……ください……」
フェリシアは 妙に緊張した声 で言った。
「おう、ありがとさん! 一個5銅貨だ!」
「……!」
フェリシアは 即座に後ずさった。
「お、お金を渡さないと買えないの……」
「そりゃそうやろ!! どうやって生きてきたんやアンタ!!」
「今までは……奪うか、もらうか、忍び込んで取るか……」
「それ犯罪やんか!!」
イリスは 盛大にツッコんだ。
「ほら、これで払うんやで」
ルナが 優しく銅貨を手渡す。
フェリシアは おそるおそる 店主に渡した。
「おぉ、ちゃんと払えたな!」
「これが……正規の取引……」
「せやで、お嬢様! これでアンタも普通の女の子や!」
「普通の女の子は暗殺技を使えない」
「確かに」
こうして、フェリシアの 初めての買い物 は成功した。
しかし――
「……これ、どうやって食べるの?」
「まさかやけど……リンゴの食べ方も知らんのか?」
「……」
フェリシアは そっとカインを見た。
「……皮ごとかじれ」
「……!!?」
バリッ!!
「噛んだ! ほんまに噛んだで!? しかも普通に食ってるし!?」
「美味しい……」
こうして、フェリシアはまたひとつ 普通の生活を学んだ のだった。




