表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/244

5  京都弁少女、誤解する

 

5 京都弁少女、誤解する



「――はっ!」


 俺は草原に寝転がったまま、勢いよく目を覚ました。


(や、やられた……)


 一体何が起こったのか?  思い返すまでもなく、光の洗礼を浴びて即死したのだ。


「おぉ……確かにまたちょっと強くなった気がする……」


 転生四回目。体が軽い。視界もさらにクリアになっている気がする。もはや人間を超え始めているのでは?


「……いや、そんなことより!」


 俺はガバッと起き上がり、先ほどの場所へダッシュした。


(あの少女だ!  俺を殺ったあの京都弁少女!)


 森の中を駆け抜け、さっきの開けた場所に戻る。そこには、さっきと同じ少女がいた。


「……はぁぁぁぁぁ、怖かったぁ……!」


 なんと、少女は腰を抜かしていた。がくがく震えながら、未だに俺のことを警戒している。


(あ、やっべ……完全にトラウマ与えてる……)


 俺はそっと近づいて、できるだけ優しい声で話しかけることにした。


「あの~、大丈夫ですか?  俺、ゾンビじゃないんで――」


「で、出たぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「待て待て待て!?  なんでだ!?」


 少女は地面を這うように後ずさり、顔面蒼白で俺を指さした。


「お、おかしいやろ!?  さっきあんた、うちが浄化魔法で塵にしたはずや!」


「そ、それは……えっと……」


 正直に「俺は死ぬたびに強くなるスキル持ちで、さっきも普通に生き返っただけです」って言っても、多分信じてもらえない気がする。


(どうする……どう説明すれば……)


 悩む俺を尻目に、少女はガタガタ震えながら、目をぐるぐるさせていた。


「ひぇぇ……これはもう確定や……あんた、絶対幽霊さんや……!」


「いや、違う違う違う!!」


「なら証拠見せてぇや!!  ほんまに生きてる言うんやったら、米とか塩とかぶっかけたるから、それで反応せんかったら信じたる!」


「なんでお祓い前提やねん!!」


「うちの浄化魔法も効かへんのに、普通の人間なわけないやろぉぉぉ!!」


 そう言いながら、少女はどこからか布袋を取り出し、塩を取り出そうとしている。


「ストップストップ!!  やめろ、俺に塩を振りかけるな!」


「ほな、証拠見せんかい!」


「証拠って言われても……ほら!  ちゃんと息してるし!」


 俺は胸をドンッと叩いた。


「ふん……ほな、心臓の音は?」


「……」


(え、これもしかして俺、心臓止まってたりする……?)


 怖くなって手を当ててみるが、よく分からない。今まで気にしてなかったけど、スキルのせいでもしかして俺、ゾンビっぽくなってる説が……?


「……な?  おかしいやろ?」


「ま、まぁ、それは置いといて!」


「置いとけへんわ!」


 少女はふるふると震えながら、さらに俺との距離を取る。


(やばい、このままじゃ完全に誤解されたままだ……どうすれば……)


 すると、その時――


「って、あれ?」


 少女がふと俺をまじまじと見つめる。


「……なんやろ……さっきより、ちょっとかっこよなってへん?」


「え?」


「なんか……死ぬ前はボロボロで、薄汚れた浮浪者みたいやったのに……」


「ちょ、それひどくない?」


「でも、今は……なんか顔もシュッとしてるし、雰囲気も……ちょっと騎士様みたいやな……」


 少女は腕を組み、うーんと唸りながら俺をじろじろと見てくる。


(もしかして……スキルの効果で、死ぬたびにちょっとずつ見た目も整ってる……?)


 確かに、体の調子はどんどん良くなってるし、視界もクリアになってる。もしかして、転生を繰り返すことで、イケメン補正までついてきたのか……!?


「……いや、でもやっぱり胡散臭いなぁ」


「えぇぇぇぇ!?」


 せっかく少女が俺の見た目を褒めてくれたのに、まだ信用されてない!  くそぉ、どうやったらこの誤解を解けるんだ!?


 そんな俺を見ながら、少女は警戒心を解かないまま、ちょっと困ったように呟いた。


「……まぁ、取りあえず名前ぐらいは聞いたるわ」


「おお、やっと俺を幽霊扱いしない気になった?」


「まだ信用はしてへんで?」


「……それでもありがたい」


 俺は一つ咳払いをし、改めて自己紹介をした。


「俺の名前はカイン。カイン・レヴェナント(なぜか知ってる。適当につけたわけじゃないよ)。……お前は?」


 すると少女は少しだけ逡巡し、ぽつりと名乗った。


「……うちの名前は、ルナや」


「ルナ、か」


「せや。精霊王の娘、ルナ・アストレアや」


「せ、精霊王の娘!?」


 なんかすごい肩書が出てきた!!  俺は思わず目を丸くした。


 こうして、俺とルナの最悪な出会いは、少しずつ転がり始めるのだった――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ