4 ついに初めての人間との遭遇!
4 ついに初めての人間との遭遇!
「はぁ、はぁ……意外と死ぬのも楽じゃねぇな……」
俺は森の中の大きな木の根元に腰を下ろし、荒れた息を整えていた。
結論から言うと、あれからスライムには殺されなかったが、その後の挑戦はわりと順調だった。
最初に野犬に噛まれ、次に森の奥で遭遇した大きめのイノシシに突進された拍子に、崖から落ちて合計転生三回。
「で、気づいたらなんか体がめちゃくちゃ軽いんだよな……」
最初はただの大学生だった俺の体が、今ではまるで鍛え抜かれたアスリートのように動く。筋肉痛もないし、視界もやたらクリア。
「……すごいスキルだよな、これ」
そんなことを呟きながら、俺は立ち上がった。そろそろ人里を探さなきゃな――と思った、その時。
「……ん?」
森の奥から、何やらかすかに歌声が聞こえてきた。
(え、人間!?)
この世界に来てから初めて聞く、明らかに知的生命体の声! 俺は思わず声のする方へと駆け出した。
──そして、木々の隙間から、目の前に開けた景色を見た瞬間、俺は思わず息を呑んだ。
そこには、一人の少女がいた。
透き通るような銀髪が風に揺れ、白く整った肌が月光を反射して輝いている。腰に下げた小さな袋から、何か不思議な光の粒がふわふわと舞い上がっていた。
(お、おぉ……神秘的すぎる……)
まるで森の精霊か妖精か、そんな感じの神々しさ。だが、その少女が開いた口から出た言葉は――
「はぁ~、けったいな仕事やわぁ……こんな夜中に精霊の浄化とか、勘弁してほしいわぁ」
「京都弁!?」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまった俺。すると、少女はピクリと肩を震わせ、こっちを振り向いた。
「……え? 誰やあんた?」
俺と少女の視線が交差する。次の瞬間――
「いやぁぁぁぁあ!! なんで人がおるん!? しかもこんな森の奥で!?」
少女は飛び上がりながら、バッと数歩後ずさった。そして、俺の姿をじろじろと観察し――
「ちょ、ちょっと待ちぃな……! あんた、全身血まみれやん!? ゾンビ!?」
「いやいや違う違う! 誤解だって!」
俺は慌てて手を振る。確かに、さっき野犬に噛まれた時の血がまだ服に残ってるし、イノシシにやられた時の泥もついてる。でも、俺はゾンビじゃない!
「嘘つき! そんなん言うて、襲いかかってくる気やろ!? ひぇぇ、やめてぇ!」
「いや、ちょっ……って、待て待て待て!? 何その光!? ちょっ、まぶし――」
少女の手元から、突如神々しい光の奔流が放たれた。
「あばばばばば!!?」
俺の全身が光に包まれ――
転生四回目、確定。
──こうして、俺と少女の最悪な出会いは幕を開けた。