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3 もっと強い敵を求めて

 

 3 もっと強い敵を求めて



「しょうがない、他の手を考えるか」


 俺はため息をつきつつ、スライムを後にした。


 もうこの時点で気づいてしまった――スライムじゃ俺を殺せない。つまり、より強い敵を探さなければならない ということだ。


(でも、どこに行けば強い敵に会えるんだ?)


 俺はあたりを見渡す。


 広大な草原が広がり、のどかな風景が目に飛び込んでくる。

 鳥がさえずり、木々がそよぎ、穏やかな時間が流れる。


(……いや、こんな平和な場所に強敵なんているわけがない)


 どこを見ても、スライムしかいない。むしろ、俺がさっきぶっ倒したスライムの仲間たちが、遠巻きにこちらを警戒している。


「いやいや、お前らには用はないんだよ……」


 俺は呟きながら、ふと遠くの方を見ると、森が広がっているのが見えた。


(おっ、あの森ならさすがに強い敵がいるんじゃないか?)


 ゲームとか異世界モノの定番として、森=強いモンスターの住処 というのは鉄板だろう。


「よし、決まり!」


 俺は意気込んで、森へと向かうことにした。


 ⸻


 森の入り口


 森の手前までやってきた俺は、ふと足を止めた。


(……暗くない?)


 昼間だというのに、森の中は妙に薄暗い。木々が生い茂っていて、太陽の光を遮っているせいだろうか。


 風が吹くたびに、木の葉がざわざわと揺れ、どこからともなく不穏な気配を感じる。


(うーん、いかにも「ここから先は危険ですよ」みたいな雰囲気だな……)


 だが、俺には迷っている時間はない。死ななきゃ強くなれないんだ。


「行くしかねぇ!」


 俺は気合いを入れ直し、森の中へと足を踏み入れた。


 そして、森の中で出会ったのは……



 森の中は草原とは打って変わって静かだった。


 時折、枝が揺れる音や、小さな動物の気配がする。


(よし、強い敵がいそうな雰囲気だな……)


 俺は慎重に歩を進めながら、辺りを観察した。


 すると、茂みの奥でガサガサと何かが動く音がした。


(きたか!?)


 俺は息をのんで、その方向を見つめる。


 すると――


「ピギィィィ!」


 ……ん?


 飛び出してきたのは、ピンク色の丸っこい何かだった。


「ぶ、豚……?」


 そう、そこにいたのは 野生のイノシシでもなく、獰猛なモンスターでもなく、ただのブタ だった。


 サイズは小型犬くらいで、つぶらな瞳が俺を見上げている。


「ピギィ?」


「いや、お前じゃない……」


 強敵を求めて森に来たのに、最初に遭遇したのがブタとはどういうことだ。


 試しに手を差し伸べてみると、ブタは俺の指をぺろぺろ舐めてきた。


(かわいい……)


 両手で抱え上げると嬉しそうに鼻を摺り寄せてくる。


 癒されるわー。


「いやいや、俺はこんな癒しを求めてるんじゃないんだ!」


 俺は軽くブタを撫でると、その場を後にした。


(もっと強い敵はどこだ……?)


 そう思いながら森を進んでいくと、今度は別の気配を感じた。


「グルルル……」


 今度こそ来た!


 俺は身構え、茂みの中をじっと見つめる。


 そして次の瞬間、黒い影が飛び出してきた!


 牙をむいた、猛々しい姿!


「よし!  ついに来たか、俺に死をもたらす相手!」


 俺は思わず興奮しながら叫ぶ。


「どんな強敵だ!?  ドラゴンか!?  オーガか!?  それとも――」


「ワン!」


「犬かよ!!!」


 俺の目の前に現れたのは、どう見ても普通の野犬だった。


(いや、待て……こいつ、普通に噛まれたら痛いんじゃないか?)


 俺はじりじりと後ずさりながら、犬と向き合う。


 犬は低く唸りながら、俺にじりじりと近づいてくる。


 死を目前にして、ふと不安がよぎる。……ほんとにまた死に戻りするんだよなあ?


 急にビビりだす俺。復活できなければ終わりなのだ。


「えーっと、できれば平和的に――」


「ワン!」


「ひぃぃ!」


 犬が突然飛びかかってきた!


(ダメだ、回避不能!)


 俺はそのまま地面に押し倒され、鋭い牙が俺の首元に迫る!


 ガブッ!!!


「うぎゃあああああ!!!」


 視界が暗転し、俺の意識はそこで途絶えた――。


 ⸻


 そして復活


 バチンッ!


 俺の体が光に包まれ、次の瞬間、再び森の入り口に立っていた。


「……あ?」


 さっきまで犬に噛まれて死んだはずなのに、俺の体は元通りだ。


(よし、スキル【ラスト・リバース】がちゃんと発動したな……)


 俺は深呼吸してみる。


 体が軽い。いや、むしろさっきよりも明らかに調子がいい。


(……ってことは、やっぱり強くなってるし、やっぱり生き返れる!?)


 俺は思わず拳を握りしめた。


「よーし、次は負けねぇぞ!」


 こうして俺の死んで強くなる実験は続くのであった――。


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