2 100回死んだらどうなる? 実験開始!
2 100回死んだらどうなる? 実験開始!
「よし、やるか!」
俺はぐっと拳を握りしめ、辺りを見渡した。
青々とした草原がどこまでも広がり、心地よい風が頬をなでる。空には雲ひとつなく、鳥が優雅に飛んでいる。
……とてもじゃないが、「死にまくるぞ!」という雰囲気ではない。
だが、そんなことは関係ない!
俺のスキル【ラスト・リバース】は「死ぬたびに強くなる」ものらしい。ならば、試さない手はない。ここで遠慮していては、異世界に転生した意味がないのだ!
「まずは……さっきのスライムでいいか」
そう考えながら、俺は視線を巡らせる。
すると、ちょうど目の前で、ぷるぷると震えている青いスライムを発見。
おお、いいぞいいぞ。いかにも「異世界の最弱モンスター」といった感じのビジュアルだ。
「頼むぞ、相棒(勝手に相棒認定)! 俺をやれ!」
俺は堂々と両手を広げ、胸を張った。
さあ来い、スライム! 遠慮せずに俺を殺せ!
……が。
「……ん?」
スライムは、ぽよんぽよんと軽く跳ねるだけで、一向に攻撃してこない。
(……お、おかしいな?)
なんか、こっちをじっと見つめてるような気もする。いや、目があるのかどうかすら分からんが、とにかく「え、俺が何か?」みたいな顔(?)をしている。
「おーい、やる気あるのかー?」
俺はスライムをちょんちょんと突いてみた。
ぷるんっ。
おお、意外と弾力がある。でも、痛みはまるでない。むしろひんやりしてて気持ちいい。
「えーっと……おい、もっと本気出せ!」
そう言いながら、俺はスライムを持ち上げてみた。
ぷにゅん。
うん、柔らかい。ちょっとしたストレス解消グッズみたいな感触だ。
「ダメだ、全然攻撃してこない……こうなったら!」
俺はスライムを頭の上に乗せ、わざと全身をくねくね動かしてみた。
「うおお! どうだ!? これで俺はもう完全にお前の捕食対象だぞ!」
びたんっ。
スライムが俺の顔に落ちてきた。視界がゼロになる。
(おっ、これはワンチャン窒息できるんじゃね?)
そう思ったが、呼吸は普通にできた。どうやらこいつには、俺を覆い尽くして窒息させるような高等戦術はないらしい。
「……お前、戦う気あんの?」
俺はため息をついて、スライムを地面に戻した。
(いや、待てよ……まさか)
一つの可能性が脳裏をよぎる。
(もしかして、もうスライム程度じゃ俺を殺せないのか?)
たった一度死んで復活しただけで、スライムの攻撃は完全に無力化されてしまったらしい。ステータス爆上がり?
「……やべぇな、このスキル……」
俺はスライムをじっと見つめる。
スライムも、じっと俺を見つめ返してくる。
沈黙が流れた。
「……ごめんな、無理言って」
俺はそっとスライムを撫で、その場を後にした。
「しょうがない、他の手を考えるか」
こうして俺は、より強そうな敵を探し、森へと足を運ぶことにしたのだった。