121 天翔の霊草の試練!(帰還編)
121 天翔の霊草の試練!(帰還編)
山を下るカインたちの足元には、乾いた土とゴツゴツした岩が広がっている。
さっきのブラッドホークやガルドンとの戦いのせいで、ところどころに大きなクレーターができており、まるで戦場の跡地のようだった。
「……うーん、思ったより道が荒れてるな」
カインが顎に手を当てて考え込む。
「いや、アンタが荒らしたんやろがい!!」
イリスの的確すぎるツッコミが炸裂する。
「まったく……魔物よりも、カインのフライパンの方が厄介やわ……」
「せやけど、これでもう霊草は手に入ったし、あとは村に戻るだけやな!」
「せやな! はよ行こ!」
イリスが嬉しそうに言うが、カインはじっと険しい山道を見つめた。
「……ただ、下山の問題があるな」
「ん? どないしたん?」
「この道、登るのはまだええけど、降りるんめっちゃキツない?」
確かに、上るときはまだしも、降りるときは滑りやすく、崖も多い。迂闊に足を滑らせたら、そのまま転がり落ちてしまいそうだった。
「そういや……ここ登るとき、めっちゃ時間かかったもんな……」
「うん。ほぼ這い上がるレベルやったしな」
ルナとイリスも、じわじわと不安になってきた。
「……なぁ、さっきの霊草の効果、うまく使えば飛んで降りられるんちゃう?」
「え?」
カインの発言に、ルナとイリスの表情が固まる。
「え、ちょ、待って待って!? まさか……」
「そうだ! さっき俺、ちょっとだけやけど飛べただろ?」
「いや、飛んでたっちゅーか、暴れてただけや!」
「でも、コツを掴めば、フワッと降りるくらいはできるかもしねー!」
カインは自信満々に霊草を取り出した。
「よし、俺がまず試すぜ!」
「やめとき!!!」
ルナとイリスが止める間もなく、カインは霊草をひょいっと口に入れた。
――その瞬間。
「うおおおおお!!!」
カインの体がふわっと宙に浮いた。
「おお、いい感じだ!」
今度は足をバタつかせることなく、ゆっくりと浮かび上がっていく。
「す、すごいやん! ほんまに飛んどる!」
イリスが目を輝かせる。
「だろ? じゃあ、これで下山――」
そう言いかけた瞬間だった。
「おい、ちょっと待て!? なんか風強くなってないか!?」
「え?」
見ると、山の上空は突如として突風が吹き荒れ始めた。
「ちょ、ちょっと待て! こんなん聞いてねーぞ!?」
「そらそやろ! 天翔の霊草の効果や!」
「いや、説明に”突風に巻き込まれる”とは書いてなかっただろ!!!」
カインの体は突風に煽られ、どんどん上へと持ち上げられていく。
「お、おおおおおお!? これヤバいぞ!? 上空に吸い込まれ――」
「ぎゃあああああああああ!!!」
カインの叫び声とともに、彼の体は猛スピードで上空へと飛ばされていった。
ルナとイリスは唖然としながら、その光景を見上げる。
「……え、あれって戻ってこれるん?」
「たぶん無理ちゃう?」
「いやいやいや、村に帰るどころちゃうやん!!!」
「ほっといたらどこまで飛んでくんやろ……」
二人がぼんやり考えていると、遠くの方でポツンと点になったカインが、もはや星のように輝いていた。
「うわぁ、めっちゃ綺麗な流れ星になっとる……」
「って感動してる場合かい!!!」
イリスが思わずツッコミを入れる。
――その数分後。
ズガァァァァァン!!!
数百メートルほど離れた山の斜面に、ものすごい勢いでカインが落下した。
ラストリバース発動
「……おれ、生きてる?」
土煙の中から、何とか無事なカインがむくりと起き上がる。
「し、死んだかと思った……」
「一回死んだみたい」
「なんや、ほんまに隕石落ちたかと思ったで……」
「アンタ、下山のつもりが”墜落”になってるやん!」
ルナとイリスが呆れ顔で駆け寄る。
「いや、これ……飛び降り作戦、失敗だな……」
「そらそうやろ!!!」
こうして、カインたちは普通に山道を降りて村へと向かうことになった。
「最初から歩いて降りればよかった……」
そんなカインの呟きに、ルナとイリスは深く深くため息をついたのだった。




