120 天翔の霊草の試練!(後編)
120 天翔の霊草の試練!(後編)
カインが摘み取った青白い光を放つ草は、まるで風に揺れる羽のように儚げだった。
「……これで”天翔の霊草”ゲットだな」
満足げにフライパンの中へ霊草を入れるカイン。
「おいおい、なんでフライパンに入れるんや!?」
「せっかくだし、料理してみよかなって」
「なんでやねん!!!」
イリスの怒声が山頂に響いた。
「村の人らのために薬草取りに来たんやろ!? なんで即座に食おうとすんねん!」
「いや、食べ物っぽいだろ?」
「ちょっと待ちぃ、天翔の霊草って料理に使えるんか?」
ルナが目を細めてカインをじっと見た。
「知らん。だけど、おれのフライパンに入った時点で、料理の一部になるんじゃね?」
「適当なこと言わんといて!!」
「まぁまぁ、試してみなきゃ分からんだろ?」
「その理論でいくと、さっきのカメも試食対象になるんちゃうん!?」
「そうだな、ちょっと焼いたらいい感じになるかもしれんな」
「「やめろや!!!」」
イリスとルナの全力のツッコミをよそに、カインはフライパンを軽く振った。すると、霊草がほんのり蒸気を放ち、なんとも言えない爽やかな香りが漂い始めた。
「……うん、ええ匂いやな」
「えっ、ほんまや……! なんか、めっちゃフレッシュな香りする……」
イリスが驚いたように鼻をひくひくさせる。
「まるで森の朝露みたいやわ……って感動してる場合ちゃうやろ!」
すかさずルナが自分にツッコミを入れた。
「で? これ、ほんまに食べられるん?」
イリスが訝しげにカインを見る。
「まぁ、食ってみたら分かるだろ」
「「だからなんで毎回試食から入るんや!!!」」
カインは二人のツッコミを華麗にスルーしつつ、霊草をひょいと口に運んだ。
――その瞬間。
「うおおおおおおおお!!!!」
カインの体が突如、青白い光に包まれ、ぶわっと宙に浮いた。
「はぁっ!? な、なんだこれ!?」
「か、カインが浮いとるぅぅぅ!?」
「飛んでる!? いや、ちょっと待てや、どんな効果やねんそれ!?」
ルナとイリスが目を丸くする中、カインはふわふわと空中で足をバタバタさせていた。
「ちょ、これやばない!? 重力どっか行ったで!?」
「え、すごい! これが”天翔”の力……?」
「せやけど、なんで空中で暴れとるん!? かっこよう飛びなはれや!」
「いや、操作方法わかんねー!!!」
バタバタバタバタ!!
カインがまるで水中で溺れているかのように空中で無様に足をじたばたさせる。
「ひゃはははは! なんやねんそれ! 伝説の飛翔能力が、溺れかけの子犬みたいやで!」
「笑ってる場合じゃねーわ! これ降り方分からんぞ!? どうすんだよ!?」
「落ち着いて! そのままゆっくり降り――」
「いや、無理!!」
ボフッ!!!
カインは急に飛翔効果が切れ、見事に地面へダイブした。
「いったぁぁぁぁ……」
「まぬけすぎるやろ……」
ルナが呆れ顔でため息をつく。
「うーん……確かに飛べたのはいいけど、制御できなかったら意味ないな」
「せやな。せめてブレーキのかけ方くらい分からんと……」
「カイン、もう一回食べて試してみたらええんちゃう?」
「……あのなぁ」
カインは半ば呆れながらも、天翔の霊草の効果を改めて考えた。
「けど、これ、村の人らに使ったらどうなるんや?」
「うーん……飛ぶかもしれんな」
「病人が宙を舞うって、余計にパニックなるんちゃう?」
「確かに……」
全員が同時に想像し、何とも言えない表情になった。
「……とりあえず、ルナの神聖魔法と合わせて使えばどうかな?」
「そうやな。魔力の乱れを抑えつつ、薬草の力を最大限引き出せたら、きっと村の人たちも回復するやろ」
「よし、それで決まりだな!」
カインは気を取り直し、霊草を丁寧に袋に詰めた。
「ほな、さっさと村に戻ろか!」
「うん……てか、もうカメさん動かへんよね……?」
ルナがちらりとガルドンのいた方向を見る。
「うん、さすがにおれのフライパンで焼かれたらトラウマになってるだろ」
「守護獣をトラウマにすんなや!!!」
そんなツッコミが響く中、カインたちは再び村へと足を向けるのだった――。




