117 伝説の薬草を求めて! 山岳サバイバル
117 伝説の薬草を求めて! 山岳サバイバル
王都を離れ、貴族の視線から逃れるようにして旅を続けるカインたち。
「……はぁ、やっとあの鼻持ちならん貴族どもの顔を見んで済むぜ」
イリスが大きく伸びをしながら、退屈そうに馬車の中で足を組む。
「貴族の街って、息が詰まるんよなぁ。何しでかしても、嫌味な視線が飛んできてうっとうしいさかいなぁ。」
「あれだけ騒ぎ起こしたら、追い出されるのも当然」
フェリシアが呆れたように呟く。
カインは「しゃあないじゃん」と肩をすくめる。
「貴族の連中が理不尽なことばっか言うから、つい手ぇ出しちゃったんだ」
「ついでにフライパンで殴り飛ばしたのは?」
「……手が滑った」
「絶対ウソやな」
ルナがジト目で睨むが、カインは爽やかな笑顔を返すだけだった。
そんなこんなで、行き着いたのは小さな村。
ところが、村に足を踏み入れた瞬間、異様な空気を感じた。
「……なんか、めっちゃ静かやな」
イリスが辺りを見回すと、人の気配はあるものの、どこか活気がない。
すると、カインの前に小さな子どもがふらふらと近づいてきた。
「おじちゃん……助けて……」
「お、おじちゃん!? 俺まだ十代なんだけど!?」
「そんなことどーでもええやろ!」
イリスがツッコむ中、子どもは倒れ込むようにカインの腕にしがみついた。
「うわっ、大丈夫か?」
カインが慌てて抱きかかえると、子どもの額は驚くほど熱い。
「こりゃ、ただの風邪やないな……」
ルナが額に手を当てると、すぐに神聖魔法を発動させた。
黄金色の光が子どもを包み込み、苦しげな呼吸が少し落ち着いたものの、完全に回復したわけではない。
「やっぱり……普通の治療魔法じゃ治らへん」
その言葉に、カインたちは顔を見合わせた。
「ふむ……ルナの魔法で直らないってことは……つまり、普通の治療じゃ治らないってことか」
カインが腕を組んでつぶやくと、村の長老が震える声で語り出した。
「昔も同じ病が村を襲ったことがあった。そのときに唯一効いたのが……“天翔の霊草”という薬草じゃ」
「なんかすごい名前の薬草ですね」
カインが興味を持ちつつも、内心「中二病みたいな名前やな」とツッコミを入れる。
「じゃが、それが生えるのは”死神の絶壁”。ここから三日の距離にある、切り立った山じゃ……」
「死神の……」
「絶壁……」
ルナとイリスが同時に目を細めた。明らかにヤバい場所の匂いがプンプンする。
「“死神”ってつく時点で、嫌な予感しかせぇへんのやけど?」
「“絶壁”ってことは……落ちたら即死やな」
二人が顔をしかめる中、カインは満面の笑みを浮かべた。
「……まあ、行くしかないよな」
ズバァァァン!
まるで雷が落ちたかのように、ルナ、イリス、そしてなぜかフェリシアまでが一斉にツッコんだ。
「「「やっぱりそうなるんかい!!」」」
「いや、選択肢ないだろ! 村人助けるには行くしかないし!」
「……いや、それは分かるんやけどな?」
イリスが呆れ顔でカインを指差す。
「アンタ、その笑顔が問題やねん! なんでそんなワクワクしとんねん!」
「そりゃ、冒険は楽しいじゃん?」
「どこのアホが“死神の絶壁”ちゅう危ない場所に、ウキウキしながら行くんや!?」
「いやいや、“死神の絶壁”とか、名前からしてロマンあるだろ! 絶対なんかすごい敵とか待ってるぜ!」
「……はぁ、ほんまにあんたはんって人は」
ルナが頭を抱えた。
フェリシアはじっとカインを見つめた後、ため息をつきながらポツリと呟く。
「……まあ、結局ついていくんだけど」
「ツンデレか!」
イリスがツッコミを入れる中、こうしてカインたちは”死神の絶壁”を目指すことになったのだった。




