115 フライパン英雄 vs 貴族社会! 晩餐会バトル勃発!?
115 フライパン英雄 vs 貴族社会! 晩餐会バトル勃発!?
晩餐会の会場は、まるで戦場のような空気に包まれていた。
――中央には、涼しい顔でスープを飲み干すフライパン英雄・カイン。
――そしてその周囲には、目を丸くして硬直する貴族たち。
「……おかわり?」
「なぜこの男は無傷なんだ……!?」
「このスープ、普通の人間なら舌が焼けるはず……」
呆然とする貴族たちの視線を受けながら、カインは堂々とスプーンを置いた。
「いやぁ、ここの料理人、いい仕事してるね」
満足げにうなずき、何気なくセシリア王女を見ると——
「まぁ……カイン様、お強いのですね……!」
キラキラとした尊敬の眼差しを向けられていた。
(いかん、このままだと俺の「貴族に向いてないアピール作戦」が完全に逆効果になっちゃう……!)
ここで手を打たなければ、王女の求婚騒動がさらにややこしいことになってしまう。
(しゃーない、もっと決定的に「こいつは貴族の場には相応しくない!」と思わせるしかない!)
ちょうどその時、貴族たちの陰謀が動き出していた。
貴族席の奥、一際豪華な装飾の椅子に腰掛ける侯爵ギルバート・ヴァレンティン。
彼は不敵な笑みを浮かべながら、隣の部下に耳打ちした。
「……あの男、ただ者ではないな」
「はい、まさかあの激辛スープを平然と飲むとは……」
「ならば、次の手を打つぞ。例の“特別なワイン”を用意しろ」
「かしこまりました」
ギルバートはゆっくりとワイングラスを傾けながら、静かに笑った。
(どんな怪物でも、礼儀作法には勝てまい……!)
彼が用意させたのは、王族専用の「高貴なるワイン」。
これは極めて格式の高い儀式に使われるもので、正しい手順で飲まなければ、無礼者として処罰されるのだ。
(……さて、冒険者風情に、このワインを正しく飲めるかな?)
数分後、ギルバートが優雅な仕草でワインを掲げ、にこやかに言った。
「さて、カイン殿。せっかくの晩餐です。王族専用の『高貴なるワイン』を召し上がりませんか?」
給仕が、精巧な金の装飾が施されたグラスを差し出す。
カインは、そのワインの香りをクンクンと嗅ぎ——
「おっ、いい香りだね!」
次の瞬間——
グラスを持ち上げ、そのまま一気飲みした。
ゴクゴクゴクゴク……!!
「!!!!!!?????」
場が凍りつく。
「ちょ、ちょっと待て……!」
「王族専用のワインを……一気飲み……!?」
「馬鹿な……! そんな無礼が許されるはずがない……!」
ギルバートも目を見開いて硬直している。
(こ、この男……まさかワインの儀式を知らないのか!?)
『高貴なるワイン』は、本来、以下の手順で飲むのが正しい作法である。
① ワインの香りをじっくり楽しむ。
② グラスを軽く傾け、ほんの一口だけ口に含む。
③ 舌の上で転がしながら、芳醇な風味を堪能する。
④ 上品に飲み込む。
しかし——
カインのやったこと:一気飲み
「ぷはぁ〜! うまい!!」
「!!!!!」
(こ、こいつ……作法の「さ」の字もない……!)
驚愕の表情を浮かべる貴族たち。
しかし、そんな中で最も意外な反応を見せたのは、王女セシリアだった。
「……ふふっ」
「ん?」
王女は、口元に手を当てながら、楽しそうに微笑んだ。
「カイン様のように堂々と飲まれる方、初めて見ましたわ」
(……あれ?)
「実は、私も昔から『このワイン、なんでちびちび飲まなあかんのやろ……』と思っていたのです」
「……」
「では、私も——」
ゴクゴクゴク!!
「!?!?!?!?!?!?」
なんと、王女がカインを真似てワインを一気飲みしてしまった。
(あかん、貴族文化が破壊される……!)
大混乱に陥る貴族たち。
そして、セシリアは満面の笑みで——
「うふふ♪ おかわりをいただけますか?」
「」←(給仕は完全に固まっている)
こうして、カインの「貴族には向いてないアピール」は、
まさかの「貴族文化変革の始まり」へと発展してしまったのだった——。




