113 貴族の晩餐会に招待!? フライパン英雄、上流社会に殴り込む!
113 貴族の晩餐会に招待!? フライパン英雄、上流社会に殴り込む!
カインが闘技場の控室でくつろいでいると、豪華な装飾が施された招待状が届けられた。
『王国の貴族たちが一堂に会する晩餐会へ、特別招待いたします。
貴族社会への第一歩として、ぜひご参加くださいませ。
——王国宮廷局』
「……いや、なんで俺が貴族の晩餐会に行かなきゃならないんだよ」
ベッドの上でダラリと横になりながら、カインは深いため息をついた。
昨日の王女セシリアからの突然の求婚騒動で、彼は既に十分すぎるほど目立ってしまっている。
しかし、どうやらその影響はまだまだ続くらしい。
「……ふぅん」
「……なるほどなぁ」
「……ほぉ」
三人の視線が、妙に冷たい。
「お、お前らなんだよ、その目は……」
「カイン、『貴族社会への第一歩』とか書いてあるんやけど?」
「つまりやな、これは『フライパン英雄、王族入りコース』の始まりちゃうか?」
「正式に貴族になって王女の婿にされる」
「いやいや、俺はそんなつもりないって!?」
「ほな、断ったらええんちゃう?」
「そやそや。『ワイは貴族になんて興味ないんじゃ!』って、きっぱり言うたらええねん。」
「……まさか、ちょっと興味あるとか?」
「ある訳ないだろ!! 俺は自由気ままに生きるのがモットーだぜ!!」
彼はバンッとフライパンを叩きつけて叫んだ。
その瞬間——
「おや、それは残念ですな」
部屋の扉がすっと開き、優雅な貴族風の男が入ってきた。
シルクの上着に金の刺繍を施した豪奢な服装。整った口ひげを撫でながら、上品な笑みを浮かべている。
「これはご挨拶が遅れました。私はアルベルト・フォン・ブラッドレイ。王国宮廷局の長官でございます」
「……はぁ、で?」
「本日は、ぜひとも晩餐会にご出席いただきたく、直接お願いに上がりました」
「いや、俺、行く気ないんやだど?」
その言葉に、アルベルトはフフッと笑い——
「ですが、王女セシリア殿下もいらっしゃるのですよ?」
「行きます。」
「「「おいコラァ!!!」」」
速攻で三人からのツッコミが炸裂した。
しかし、カインには考えがあった。
ここで晩餐会に行き、適当に振る舞って「俺は貴族向きじゃない」と思わせればいいのではないか、と。
(俺の適当な言動を見せつければ、さすがに貴族入りの話も消えるはず……!)
そう考え、彼は晩餐会への参加を決意した——。
*** 王国宮殿・晩餐会会場
広大な宮殿の舞踏会場では……金色に輝くシャンデリアが天井から吊るされ、煌びやかなドレスやタキシードに身を包んだ貴族たちが談笑している。
豪華な料理がずらりと並ぶテーブル。銀の食器がキラキラと光り、ワインが上品に注がれている。
その場に——
圧倒的に場違いな存在が一人。
「なぁ、これ、どう考えても俺、浮いてるよな?」
彼は普通の冒険者風の服装のまま、フライパンを背負って会場に立っていた。
周囲の貴族たちは、明らかに彼を値踏みするような目で見ている。
「……あの者が、王女殿下に求婚されたという冒険者か」
「噂ではフライパンで戦うとか……冗談では?」
「やはり品格がな……貴族には相応しくないな」
(よし、いい感じに見下されてる。これなら、すぐに『こいつは無理だ』ってなるだろう)
そう思っていたが——
セシリアの声。
「カイン様!」
王女セシリアが現れた瞬間、状況は一変した。
彼女は優雅にドレスの裾を持ち上げ、可憐な微笑みを浮かべながらカインの元へと歩み寄る。
「お待ちしておりました」
「あ、ど、どうも……?」
その瞬間、貴族たちがざわめいた。
「おい、王女殿下があの男を迎えに行ったぞ!」
「まさか、本気で婚約するつもりでは!?」
「こ、これはもしかして……フライパン貴族誕生の瞬間……!?」
(やばい、なんか盛り上がってしまった!?)
彼の「適当に振る舞って貴族入りを避ける作戦」は、あっさりと崩れ去ったのであった——。




