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酔いどれエルフと酒の歌  作者: チョコレ
第三杯 酔いどれ亭、再建中!
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第4話 エルフのコイン狂騒曲!

 無事にライアンを筆頭に、商会が出資を引き受けてくれることになり、そこから話はとんとん拍子に進んだ。まるで酔いが回るみたいに、スムーズに。


 爆発事件のせいで、元「酔いどれ亭」の跡地には買い手がつかず、ずっと放置されたままだったらしい。逆にこれはチャンスよ! 立地は最高だし、何より――あの場所を乗り越えてこそ、本当の「酔いどれ亭」になる。


「再建するなら、あそこしかないでしょ!」


 そう決めて、工事の準備が着々と進んでいく。とはいえ、お店がすぐに出来上がるわけじゃない。だから、それまでは今まで通り、「酔いどれ小屋」で営業を続けることにした。


 そして、そんなある夜――


 私はカウンターでグラスを磨いていた。いつものように、常連たちが酒を片手に笑い合い、気持ちよく酔いしれている。


 穏やかねぇ、なんて思った矢先――


 バァン!!!


 突風が店内を駆け抜け、酒瓶がガタガタと揺れた。カウンターの酒樽がゴロンと転がり、客たちが驚きの声を上げる。


「うおっ!? なんだなんだ!?」

「また厄介事か?」


 そして、暴風の中心から現れたのは――


「おおおおおお!! ここが噂の酔いどれ小屋か!!!」


 妙にテンションの高い男だった。


 カウンター越しに観察すると、豪華な刺繍入りのジャケット、ジャラつく金銀銅のコイン、胡散臭いほどの笑顔。


「ふっふっふ…私はフィリップ・ニアス! 世界中のコインを集める者!!」


「また変なのが来たわね」


「そして! この店にはエルフの里の緑のコインがあると聞いた!!」


「……は?」


 私は思わずポケットを探る。


 ――あった。


 小さな緑色のコインをカウンターに置く。


「おおおおおおおお!!! それは紛れもなく『エルヴァルド・グリーン』!!!」


 フィリップの目が輝き、興奮で震えながらカウンターに身を乗り出してきた。


「やめなさいよ!! そんなに興奮しないで!」


「知らぬのか!? これはエルフの里でしか手に入らない、超貴重な通貨なのだ!!!」


「……いや、普通に使われてるお金よ?」


「そう!! だからこそ貴重なのだ!!」


「いや、普通に流通してるから貴重じゃないのよ!!!」


「譲ってくれ! いくらでも払う!」


「いくらでもって……どれくらい?」


「……銀貨十枚!!!」


 私は緑のコインを手のひらで転がしながら考える。


(これ、エルフの里では銅貨一枚くらいの価値よね? ってことは……めっちゃ儲かる!?)


「……交渉成立!!!」


「おおお!! ありがとう!!!」


 フィリップは歓喜の声を上げながら、銀貨十枚を私に渡し、緑のコインを握りしめた。


 ――が、その瞬間。


 バタン!!


 さらに威圧感たっぷりの男が店に入ってきた。


 長身、銀の髪、威厳に満ちた眼差し。


「……リリィ」


「……うわっ、リーヴァン!!」


 エルフの族長、リーヴァン・エリステアが、厳しい顔でこちらを見ていた。


「実は今、エルフの里の貨幣を新しくすることになってな。その古い緑のコイン、もうすぐ価値がゼロになるぞ。」


「……え?」


「新しい通貨に変わる。つまり、それはただの金属の欠片だ。」


「えっっっ!!???」


 私は反射的にフィリップを見る。


 フィリップの顔が、見事に凍りついていた。


「……い、今なんと?」


「だから、そのコイン、もうすぐ使えなくなるの」


「嘘だあああああああ!!」


 フィリップが頭を抱えて叫ぶ。


「いや、まぁ、君のコレクションとしては価値があるんじゃない?」


「くっ……だが私は……コインの価値と歴史を楽しむ者……!!」


「まぁ……銀貨十枚は高かったかしらね」


「ちょっと待て!! 返金は……?」


「契約成立だから無理よ」


「ぐあああああああああ!!」


 フィリップが悶絶する中、フォルクがグラスを傾けながら呆れたように言った。


「……まさかの転売成功だな」


「いや、私は正当な取引をしただけよ!」


 フィリップはしばらく悶絶していたが、やがて静かに立ち上がった。


「……わかった。せめて、この痛みを癒すための酒をくれ……」


「……最初からそう言いなさいよ!じゃあ、最高の一杯を出してあげるわ!」


 ベースとなるのは、深い琥珀色のレガシー・ラム。

 樽で十年以上熟成されたこのラムは、長い年月を経たものだけが持つ、重厚で複雑な味わい。


 そこに、焼いたオレンジの皮とシナモンを加え、ほのかに甘いバニラの香りを纏わせる。

 仕上げに、エルフの森で採れた蜂蜜を垂らし、ほろ苦さと甘みのバランスを整える。


 そして最後に、金箔を一筋グラスの中に舞わせる。琥珀色の液体の中で、宝石のように煌めく黄金の光。


「さぁ、これが『フォーチュン・カスク』よ。」


 フィリップはグラスを手に取り、一口飲む。


「……っ!! うまい!!!」


「でしょ?」


「……くそぉぉぉ!! コインは損したが、この酒が飲めたならよしとしよう!!!」


 なんでよ!?


 こうして、コイン狂騒曲は幕を閉じた――が。


 翌日もフィリップは「もっと珍しいコインはないか!?」とやってきた。


 ……懲りないわね、本当に。


 ─


「魔法樽を手放させる計画は、これより第三段階へと移る。」


 闇の中、静かに囁かれる声。


「酒ギルドからの妨害は、もはや表立っては難しい…ならば、次は魔術ギルドだ。」

「魔術ギルドの代表も、神々の杯には目がなかった。」


 影の一人が口元を歪める。


「当然だ。遠き古代の伝説が蘇るのだからな…。」

「魔法の深淵に迫る――それは、避けられぬ道理。」

「さぁ――酔いどれ亭とやらが完全に復活する前に、魔法樽を手放させるぞ。」


 夜の闇に、静かな笑いが溶けていった。

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@chocola_carlyle

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