第43話 嵐を呼ぶフルーツキング!
バンッ!!
酔いどれ亭の扉が勢いよく開いた。いや、勢いよくどころじゃない。派手にぶち破るくらいの勢いで。
「フルーツこそ、世界の宝!! そして私は、その宝を探し求める者!!!」
店じゅうが一瞬静まり返る。フォルクがジョッキを持ったまま動きを止め、ジーナがペンを握ったままピタリと固まり、ドラコのかじっていたナッツがポロリと床に落ちた。
(…また妙なのが来たわね)
私がカウンター越しに目を細めると、そこにはありえない格好の男が立っていた。
全身、色とりどりの果物の装飾をまとい、腰には大小さまざまな果実が詰まったポーチ。マントにはブドウ、服のボタンにはサクランボ、挙句の果てに帽子の先端にはバナナ。まるで果物市場の擬人化みたいな見た目の男が、堂々と胸を張っている。
「おい……なんだ、あいつ?」フォルクが困惑しながらつぶやく。
「フルーツの化身か?」ドラコがナッツを拾いながら呆れた声を出す。
男は派手なマントを翻し、キメ顔で高らかに宣言した。
「我が名はアラン!果実の王にして、フルーツの伝道師!!」
「…フルーツの王?」ジーナが眉をひそめる。
「そうだ!! そして私は知っている……の店には、ドラゴンがいるということを!!」
店の空気が一瞬張り詰める。
「お、おいおい、俺のことか?」ドラコが尻尾をピクッと揺らす。
アランは満面の笑みを浮かべると、腰のポーチから真っ赤でトゲトゲの果実を取り出した。
「ならば、この果実を使う時が来た!! その名も…ドラゴンフルーツ!!」
「…なにそれ?」フォルクがジョッキを置いて身を乗り出す。
「見た目は派手だが、中は純白の果肉に無数の種が詰まっている! 甘みと爽やかな酸味の完璧なバランス!! これはまさに、ドラゴンの名を冠するにふさわしい果実!!!」
「へぇ…で?」私は腕を組む。
「決まっている!! このドラゴンフルーツを使って、ドラゴンの名にふさわしい酒を作るのだ!!」
(あ、これガルドの時と同じパターンね)
野菜屋のガルドも「竜神葱で名物を作れ!」とか言ってたし、もしかして「ドラゴン」って付く食材を持ってくるのが流行ってるのかしら?
「いや、いきなり言われてもねぇ…」
「さぁ、作れ!!! そして、世界に新たなフルーツカクテルの伝説を!」
「勝手に決めないで!!!!!」
「フハハハ!! フルーツは自由!!!酒も自由!!!だからこそ、この二つを掛け合わせた時、最高の一杯が生まれるのだ!!!」
「理論がめちゃくちゃすぎる!!!!」
完全に話の流れを無視して、アランの圧に押される形で、私は仕方なくドラゴンフルーツを手に取る。
「…わかったわよ、やってやるわ。けど、アンタ、ちゃんと飲み干すのよ?」
「当然だとも!!!」
こうして、ドラゴンフルーツを使った新カクテル作りが強制スタート。
まず、ベースとなるのは《スピリット・シルヴァー》。透明でキレのある風味が特徴の高級蒸留酒。
次に、ドラゴンフルーツをすりつぶし、フレッシュな果汁を加える。これにより、鮮やかなピンク色と、フルーティーな甘みが生まれる。
さらに、レモングラスの香りを移した「エルフのシトラスリキュール」を少量足し、爽やかな余韻を引き出す。
仕上げに、細かく砕いた氷をたっぷりと入れ、シャーベットのように仕上げることで、口当たりを軽やかに演出。
グラスの中では、透き通る氷の粒とともに、美しいピンクの液体が輝いている。
「さぁ、これが『ドラゴニック・フルーツブレイズ』よ!!!」
「おおお!!! なんと美しい……!!」
アランは歓喜の声を上げ、グラスを掴む。
「ゴクリ……」
一口飲むなり、彼は目を見開き――
「……っ!!!!!」
「どう?」私は得意げに腕を組む。
「…こ、これは…!!まるで南国の風が吹き抜けるような爽やかさ!!そして、燃えるようなドラゴンの魂を感じる!!!」
「そんな大げさな…」
「いや、これは本物だ!!! 世界に広めねばならぬ!!」
「広めるのはいいけど、ちゃんとお金払っていきなさいよ?」
「いや、それはできぬ」
「…は?」
アランは堂々と胸を張る。
「私はフルーツを極めし者! フルーツを広めることこそが私の使命!」
「だから何よ?」
「つまり、金銭のやり取りは不要!」
「は? ちょっと待ちなさいよ。うち、慈善事業じゃないのよ?」
「ならば、これを授けよう!」
アランはポーチから、見たこともない紫色の果実を取り出した。
「…何よ、それ?」
「伝説の幻果、ルナベリーだ。希少価値が高く、市場に出回ることはほとんどない。これを手に入れられるのは、果実の王たる私のみ!」
私はじっとその果実を見つめる。
「ふーん、まあ、悪くないわね」
「よし、ならば話はまとまったな!」
「いや、まとまってないわよ。これは代金とは別よ!」
「おい、俺にも一杯頼む!」フォルクがグラスを置く。
「私も飲んでみたいわ」ジーナも興味津々だ。
「おいおい、俺の分は?」ドラコが尻尾を揺らしながら前に出る。
「おお! ならば、皆にこの新たな酒を振る舞おうではないか!」
「だから、タダじゃないって言ってるでしょ!」
店内は笑いに包まれ、新たなフルーツカクテルの伝説が、ここ酔いどれ亭から始まったのだった。
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