第39話 危険すぎるマジックショー!
今日も酔いどれ小屋は大盛況。
酒の香りと笑い声が満ちる中、私はカウンターで新作のおつまみを仕上げていた。
「これよ、これ! 完成!」
『ハーブ香る揚げ枝豆のレモンバターソルト』
皮ごとカリッと揚げた枝豆に、バターとレモン、たっぷりのハーブソルトをまぶした一品。噛めばじゅわっとバターのコクが広がり、レモンの爽やかな酸味が後を引く。つまむ手が止まらなくなる、お酒の相棒にぴったりな味わい。
「おっ、うまそうじゃねえか!」
フォルクがジョッキを置いて手を伸ばしかける。
「待った! まだ味見してないの!」
「いや、リリィ。お前の酒場で味見が必要な料理なんてあるか?」
「…まぁ、確かにそうだけど!」
そんなやり取りをしていると――
バァァァァン!!!!
「またか!!!!」
酒場の扉が勢いよく開き、派手な登場を決めたのは――
「皆の者、心して見よ! 今日こそ、私のマジックが世界を震撼させる!!!」
黒と赤の豪華なマントを翻し、満面の笑みを浮かべる奇術師レオン・グリモワール。
「おいおい、また厄介ごとを持ち込んだんじゃねえだろうな?」
「フォルク、何を言う! 今日は最高のマジックを披露しに来たのだ!」
「また私の店を実験場にする気ね!?」
レオンはニヤリと笑い、店の中央に大きな木箱を運び込む。
「さあ、皆の者! これが本日の目玉――"驚異の切断マジック" である!!!」
ざわめく店内。
「切断マジック…?」
「なんか…嫌な予感しかしないわね…」
レオンは高らかに杖を掲げ、宣言した。
「この箱に入った者は、箱ごと真っ二つに切られるが――」
「はぁぁぁ!?!?!?」
「安心せよ!! もちろん傷一つつかぬ安全なマジックだ!!」
いやいやいや、絶対に信用できない!!!
「さて、では――ドラコ殿!」
「…俺?」
カウンターの上でくつろいでいたドラコが、急に名前を呼ばれ身を起こした。
「君こそ、このマジックにふさわしい!! さあ、この箱に入るがいい!!!」
「おい、ちょっと待て。俺、嫌な予感しかしねぇぞ?」
「何を言う! これは完全無害なマジック!! 観客が驚き、喝采を送ること間違いなし!!」
レオンの勢いに押され、酒場の客たちも「やれやれ!」と盛り上がり始める。
「おいおい、マジかよ……?」
「…仕方ねえ。まぁ、どうせ傷ひとつつかねぇんだろ?」
そう言いながら、ドラコはしぶしぶ箱の中に入る。
レオンは満足そうに頷き、大きなノコギリを取り出した。
「では、始めよう!!!」
「うわぁぁぁ!!! そのノコギリ、めちゃくちゃ本格的なんだけどぉぉぉ!!!」
ギギギギ……!!!
レオンがノコギリを振り上げ、箱を切り始めると、店内は大盛り上がり。
「おおお、すげぇ!!」
「本当に切れるのか!?」
しかし――
ザクッ!!!!
「ぎゃあああああああ!!!!!!」
中からドラコの叫び声が響く。
「え!?!? ちょっと待って!?!?!?!?」
店内が凍りつく。
「えっ、待って待って! マジで切れた!?」
「痛ぇぇぇ!! 足がァァァ!!!!」
パニック寸前の店内。
レオンも冷や汗をかきながら必死に箱を開ける。
すると――
ドラコの下半身が消えていた。
「うわああああああ!!!!なんか足がなくなってるぅぅぅ!!!!」
「レオン!!!! これどういうこと!!!!」
「お、落ち着け!! これは、つまり……その……」
「言い訳してないでなんとかしなさいよぉぉぉ!!!!」
店内は大騒ぎ。
「おいおい、これ本当にマズイんじゃねえか?」
「いや、ちょっと待て……」
ジーナがふと、箱の底を見て首をかしげる。
「…これ、下に小さな穴が空いてるわね?」
「は?」
ジーナが箱を引っ張ると――
ドラコの下半身が、箱の裏側に押し出されていた。
「お、おいおい、なんだよ!! 俺の足があった!!!」
「なんでそんな所に挟まってるのよ!!!」
どうやら、レオンが箱の構造を間違えていたらしく、切断の仕組みがズレていたらしい。
「す、すまない!! だが、これはこれで奇跡のようなマジックでは!?!?」
「奇跡じゃなくて事故よ!!!!」
ドッと店内が爆笑に包まれる。
その後、なんとかドラコを引っ張り出し、事なきを得たけど……
「二度とやらせねえからな……」
「次はもっと完璧なマジックを持ってこよう!!!」
「持ってこなくていいぃぃぃぃ!!!!!」
こうして、酔いどれ小屋の夜はまたもや大混乱に包まれたのだった。ちなみに、混乱の最中に食べられた「ハーブ香る揚げ枝豆のレモンバターソルト」は絶品だったらしく、新たな看板メニューとなったのは…まぁ、せめてもの救いね。
ページを下にスクロールしていただくと、広告の下に【★★★★★】の評価ボタンがあります。もし「続きを読みたい!」と思っていただけた際は、評価をいただけると嬉しいです。Twitter(X)でのご感想も励みになります!皆さまからの応援が、「もっと続きを書こう!」という力になりますので、どうぞよろしくお願いいたします!
@chocola_carlyle




