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酔いどれエルフと酒の歌  作者: チョコレ
第二杯 酔いどれ小屋、開店!
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第37話 酔いどれ小屋サバイバル!

 昼下がり、酔いどれ小屋の扉が勢いよく開いた。


「リリィ、話がある」


 ドンッ!カウンターに肘をついたのは、冒険者ギルドの長、ガラハット。


「まぁまぁ、お話の前に一杯いかが?」

「それが原因で来たんだよ」

「は?」


 ガラハットはため息混じりに新聞を広げる。


「酒ギルドが『冒険者ギルドの案内所で、加盟店を優先案内しろ』と要請してきた」

「はぁぁぁ!?」


 思わず身を乗り出す。


「ちょっと待ってよ、うちの酒場は冒険者の溜まり場なのに、案内から外せってこと?」

「そういうことだ」


 カウンターの向こうでフォルクがジョッキを置き、ニヤリと笑う。


「つまり、酔いどれ小屋は公式には存在しないってわけか?」

「ふざけてるわね!」

「だからだ!」


 ガラハットが拳をバンッ!とカウンターに叩きつけた。


「だから俺は考えた!」

「…考えた?」

「酔いどれ小屋で飲み潰れずに帰れるかどうか、それを冒険者ギルドの正式な試練にする!!」

「…は?」

「名付けて――『酔いどれ小屋サバイバルチャレンジ』!!」


 店内が一瞬静まり返る。


「おいおいおい、長、それは無茶なんじゃねぇか?」フォルクが呆れ顔でジョッキを傾ける。


「いやいや、めちゃくちゃ面白いじゃない!」私はパチンと指を鳴らした。


「どうせ酒ギルドがうちの評判を落とそうってんなら、逆手に取って最高の挑戦にすればいいじゃない!」


 ドラコが尻尾を揺らしながらニヤリと笑う。


「つまり、酔いどれ小屋で飲み潰れずに帰るのが冒険者の新たな試練になるってことか?」

「そうよ!酒の力に耐え、飲みながら冷静さを保つ力も、冒険者には必要なスキルじゃない?」

「うおおおお!!!それ、面白そうじゃねぇか!!!」


 店の中の冒険者たちが盛り上がり始める。


「よし!俺も挑戦するぜ!」

「いや待て、俺のほうが耐性ある!」


 ガラハットも豪快に笑う。


「もちろん、俺も参加する」

「ギルド長自ら!?」


 フォルクがツッコミを入れるが、私はすぐさまカウンターにグラスを並べた。


 カウンターに並べられた三つの酒。どれもただの酒じゃない。冒険者の胃袋と魂を試す、特別な一杯。さぁ、『酔いどれ小屋サバイバルチャレンジ』*の幕開けだ!


 第一ラウンド:『白銀の夢』

 エルフの王族だけが口にできる、極上の果実酒。月光を浴びて熟成されることで、独特の冷涼感と深い甘みを宿す。グラスに注がれた瞬間、夜明け前の静けさを思わせる香りがふわりと広がる。


「む…これは…」

 ガラハットが慎重にグラスを傾け、一口含む。最初に舌先をくすぐるのは、森の果実の柔らかな甘み。だが、すぐにひんやりとした冷気が広がり、喉を通った瞬間には体の内側からすっと冷たくなるような感覚が残る。


「飲みやすい…が、これは後から効いてくるな」

「そうよ。この酒はゆっくり飲めば飲むほど、アルコールがじわじわと体に染み込むのよ」


 フォルクが苦笑しながらジョッキを置く。


「つまり、油断してると足がもつれるってことか」

「まぁ、ガラハットなら大丈夫よね?」

「ふん、俺を誰だと思ってる」


 ガラハットはグラスを置き、余裕の笑みを浮かべた。


 第二ラウンド:『紅蓮の嵐』

 ドワーフの秘伝、超高温発酵で作られる爆烈な烈酒。グラスに注ぐだけで、炎のようにスパイスの香りが立ち上る。濃厚な琥珀色の液体の奥には、ルビーのように赤く輝く光が瞬いている。


「ほう…色は美しいが、強烈そうだな」

「ええ、喉を焼かれる覚悟はできてる?」


 ガラハットが一口飲んだ瞬間――


「ぐっ…!!」


 体がビリビリと震え、目を見開いた。


「こ、これは…!」


 最初に襲ってくるのは、蜂蜜のような濃厚な甘さ。しかし、一拍遅れて唐辛子と火薬草の刺激が喉を焼き、全身を熱で包み込む。それはまるで、酒を飲んでいるのではなく、火を飲み込んだかのような感覚。


「くぅぅぅ…だが、クセになるな」

「でしょ?」


 私は満足げに頷く。


「この酒は鍛冶場のドワーフたちが、冬の寒さを吹き飛ばすために作ったの。飲んだら、もう後戻りできないわよ?」

「はっ、ここで止まる俺じゃない!」


 ガラハットは気合と共にグラスを置いた。


 最終ラウンド:『夜闇の深淵』

 魔術師の手によって生み出された、禁断の黒い酒。漆黒の液体は、まるで月のない夜空のように深く、静かに揺らめいている。グラスを傾けると、まるで闇が流れ落ちるように粘度のある輝きが現れる。


「これは…?」

「飲んだら、魂まで揺さぶられるわ」


 その名の通り、一滴飲むだけで意識が揺らぐと言われる幻の酒。闇夜に咲く魔法樹の果実を漬け込み、マナの高い泉の水で割ることで、常識を超えたアルコール濃度を誇る。


「…やるしかないな」


 ガラハットは静かにグラスを手に取り、一気に飲み干した。


「…っ!!!」


 数秒間、店内が沈黙する。


 ―― バタン!!!!


 ガラハット、陥落。


「ギルド長ォォォォォ!!??」


 周囲の冒険者たちが騒然とする中、私はグラスを拭きながら微笑んだ。


「残念、挑戦失敗ね」

「…いや、まさかギルド長が一番最初にやられるとは…」

「でも、これで決まりね!」

「何が?」


 私はにっこりと笑い、堂々と宣言した。


「『酔いどれ小屋サバイバルチャレンジ』は、冒険者の新たな試練として正式採用よ!」

「えええええええ!!??」


 冒険者ギルドは、"酒ギルド優先案内" というルールを逆手に取られ、新たな名物イベントを生み出してしまった。こうして、酔いどれ小屋は再び、伝説の酒場としての名を轟かせることになったのだった――!


 ─


 昼下がりの陽光が街を照らす中、建物の影に潜む者が静かに呟く。

「あのエルフは、冒険者ギルドとの関係も深い…となれば、冒険者ギルド経由の策が失敗するのは火を見るよりも明らかか。」


 短い沈黙の後、もう一つの影が低く応じる。

「となると、やはり他のギルドを利用するべきだな。特に魔術ギルド…あそこならば、有力な選択肢となるだろう。」


「酒ギルドが思うような成果を出せていない今こそ、次に向けた一手を本気で考えねばならん。」

 影たちは互いに頷き合い、昼の喧騒に溶け込むように動き出した。

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@chocola_carlyle

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