第36話 野菜屋当主ガルド登場!
バンッ!
勢いよく扉が開いた。
「リリィ! すっげぇ野菜を持ってきたぞ!!」
飛び込んできたのは、赤ら顔でガタイのいい男。肩には…なにそれ?ネギ?? いや、ネギにしてはデカすぎる。
「…あんた誰?」
「俺か? バルムート野菜店の当主、ガルドだ!」
どんっと胸を叩きながら、得意げに名乗る。
「ここ最近、評判の店だって聞いてな! うちの野菜を売り込みにきた!」
…また変なのが来たわね。
「へぇ~。で、そのバカでかいネギみたいなのは?」
「ふふん、よくぞ聞いたな!竜神葱だ!!」
ドンッ! とカウンターに置かれた葱は、普通の倍以上ある。根元はごんぶとで、葉っぱも深い緑。なんか…こう、オーラを感じるんだけど?
「ほほ~ん。それで、これをどうしろと?」
「決まってるだろ! お前んとこの看板ドラゴン、ドラコにちなんだ名物おつまみを作れ!」
唐突! でも、悪くない。むしろ…おもしろいじゃない!
「おいおい、俺を料理にすんなよ?」
隣でドラコがげんなりしてる。
「安心しろ!竜の名を冠するにふさわしいネギだ! これを使った名物があれば、酔いどれ亭の人気もさらに爆上がりだぜ!」
「なるほどねぇ…。じゃあ、やってやろうじゃない!」
まずは試しに、そのままかじってみる。
「ッッッ!!!!!」
辛っっっ!!!!口の中が燃えるような刺激! いや、これネギ!? なんかもう、攻撃されてるんだけど!?
「おう、辛いだろ!でもな、火を入れると甘みが出てうまいんだ!」
「いや、最初にそれ言って!!!」
慌てて水を飲んで落ち着く。…よし、やるわよ!斜め切りにして炭火でじっくり炙る。皮がパリパリに焦げるくらいまで焼き上げると…ふわっと香ばしい匂いが立ち込める。慎重に皮を剥くと、中から現れたのは…
「とろっとろ……!?」
一口食べると、さっきの辛さが嘘みたいに甘い! 濃厚な甘みと旨味が広がる。
「こりゃすげぇな……」
ガルドも目を丸くしている。さて、ここからが本番!
ナッツを砕いてぱらり、ハーブソルトをふって、カリカリのガーリックチップを散らし、仕上げにオリーブオイルをひと回し……。
「ドラゴンの炎焼き、竜神葱のロースト、完成!!」
焼き葱の甘み、ナッツの香ばしさ、ガーリックのパンチ…これは、絶対酒が進むやつ!
「くぅぅぅ、うまそうだ!!!」
ガルドがすぐにかぶりついた。シャクッと心地よい音が響く。
「うぉぉぉぉ…!? な、なんだこりゃ…!?」
そのまま黙々と食べ進める。まるで悟りを開いた修行僧のように静かだ。
「…うまい!! くぅぅぅ、これは最高の仕上がりだ!」
ぐっと拳を握るガルド。だが、何か言いたげな顔をしている。
「ガルド、野菜店の当主が感動するなんて、相当な出来栄えでしょ?」
「そりゃあそうよ! だがな…これに肉を合わせたら、もっと最高だと思わんか!?」
バンッ! とカウンターを叩く。
「いいか!? こんなうまい葱なら、ベーコンで巻くとか、牛肉と炒めるとか、そういう使い方をしてこそ最強のつまみになる!! だから、これに――」
「却下!!」
即答。ガルドは固まった。
「なんでだぁぁぁ!!こんな最高の葱なら、肉と合わせてこそ真価を発揮するんだぞ!?」
「うちは植物系おつまみ専門!!お肉もお魚も出しません!!それが店のこだわりなの!!」
「ぐぅぅぅぅ…!!俺の…俺の肉ぅぅぅ…!!」
カウンターに突っ伏して嘆くガルド。その肩を、ドラコがポンと叩く。
「諦めろ、おっさん。ここじゃ草を食え」
「「草いうな!!!」」
私とガルドの拳が、ぴったり息を合わせてドラコの頭をゴンッ!
「いってぇ!! でも実際、草みたいなもんだろ?」
「違うの!! ちゃんと手間暇かけて、工夫して、立派なおつまみになってんの! そんな雑な扱いしないで!!」
「へいへい、わーったよ」
「分かればよろしい、ドラコ!」
客たちは苦笑しながらエールを掲げる。
「まぁまぁ、ガルド。飲んで食べて、元気出せよ!」
「これだけうまけりゃ、肉なしでもいいだろ?」
「…くぅぅぅ!! 肉なしでもうまいのが悔しいぃぃぃ!!!」
結局、ガルドはそのまま「ドラゴンの炎焼き」をモリモリ食べ、エールをガブガブ飲み――
「リリィ!! 明日はもっとすげぇ野菜を持ってくる!! そんで今度こそ…肉を――」
「出しません!!」
「うぉぉぉぉ!!!!くそぉぉぉぉ!!!!」
そう叫びながら、ガルドは翌日も新しい野菜を持ってくるのだった。
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