第23話 おつまみが消費期限切れ!?
フォルクが新聞を広げ、眉間にしわを寄せていた。
「おいリリィ、見ろよ。酔いどれ小屋のおつまみは消費期限切れが多い、だとよ」
「はあ!? 何それ、意味わかんない!?」
カウンターを叩く手に力が入る。そもそも、うちのおつまみはほぼ保存が効くものばかり。保存技術を知らない奴が適当なこと言ってるに決まってる。
「でも、こういう噂が広まると厄介だな」
「だったら、逆手に取ってやるわ!」
私はバンッとカウンターを叩き、即座に看板を書き直した。
「不朽の美味しさ、消費期限なしおつまみ祭り!」
「へえ、そんな祭りが今日から始まるのか?」
ドラコがカウンターの上でごろんと横になり、しっぽを揺らす。
「今日からじゃないわ、今からよ!」
私はカウンターの奥から、特製の木箱をドンと持ち出す。中には、エルフの秘伝レシピで作られた、超長期保存が可能な絶品おつまみがぎっしり。
「まずはこれ! 世界樹の実のロースト!」
「千年の時を超えても腐らないっていう、あの世界樹の実か」
フォルクが目を輝かせる。
「ナッツのような香ばしさに加え、噛むたびに広がる上品な甘み。ワインとの相性が抜群よ!」
私は次に、魔法樽から取り出した瓶を並べる。
「次! 精霊の葉のピクルス!」
「ピクルスって保存食だけど、そんなに長持ちすんのか?」
「魔法の力で味を調整しながら漬け込んでるからね。常温で百年以上保存可能!」
「おい、もはや非常食じゃねえか」
「非常時でも最高の酒のアテになるってことよ!」
私は次に、黄金色の燻製を持ち上げた。
「最後に、太陽樹の燻製キノコ!」
「おお、これはエールにぴったりのやつだな!」
フォルクがすかさず手を伸ばし、一口かじる。
「んぐっ、これは…噛めば噛むほど旨味が広がるな。燻製の香りも最高だ!」
「でしょ? しかもこの燻製、百年以上持つのよ!」
ドラコが顔を上げて、じっと燻製キノコを見つめる。
「なあ、これ…百年後も残ってるんじゃねえの?」
「まあ、それはそれで歴史的価値が生まれるわね」
私はさらに看板を書き足した。
「ついでに、長期保存ができる酒もペアリング!」
「うわ、そんなのまであるのかよ」
「あるわよ! これぞ究極のセット!」
『エルフの秘蔵ワイン』
世界樹の根元で熟成された極上のエルフワイン。熟成が進むほどまろやかになる味わいは、百年後も最高の一杯
『不滅のエール』
時間が経っても風味が変わらない特製エール。麦の甘みが引き立ち、燻製系おつまみにベストマッチ
フォルクはしみじみとエールを飲みながら頷いた。
「完全に百年後の宴ができちまうな」
「でしょ?消費期限疑惑を、消費期限ゼロの伝説に変えてやるのよ!」
そして開幕した「消費期限なしおつまみ祭り」。噂を聞きつけた客たちが次々と押し寄せ、大盛況となった。
こうして、酔いどれ小屋の消費期限切れ疑惑は、むしろ「時を超える美味しさ」として新たな名物になったのだった。
─
闇夜に潜む影たちの囁きが、静かに響く。
「…時を超えてなお価値を持つもの、か」
冷たい夜風が黒衣の裾を揺らす。
「魔法樽もまた、遥か古代より続く遺物。その真価を知るのは限られた者のみ…」
「ふ…我らの手中に収める日も、そう遠くはあるまい」
沈黙の中、ひとつの影が口元を歪める。
「神々の杯――必ず辿り着く。この時代でな」
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