第22話 秘蔵酒がすり替えられた!?
コルクを抜いた瞬間、広がるはずだった芳醇な香りが、どこにもない。
「…ん?」
違和感に眉をひそめ、私はグラスを鼻に近づける。
おかしい。エルフの秘蔵酒なら、一滴でも深い果実の香りが広がるはず。それなのに、漂ってくるのは薄っぺらくて安っぽいアルコール臭。
「この匂い、どこかで…」
ジーナが目を細める。
「…これ、エルフの酒じゃねえだろ?」
フォルクの声が店内に響く。
「は?」
慌てて別の樽の封を開ける。けれど、どれもこれも同じだった。いつもの濃密な香りはどこにもない。ただの薄めた安酒にすり替えられている。
「まさか、酒ギルドの仕業か?」
カウンターの上で丸くなっていたドラコが、尻尾をピクリと動かして睨みをきかせる。
「くっ…このままじゃ客に出せないわ!」
奥歯を噛み締めながら、ちらりとカウンターを見る。そこには、新酒のお披露目を楽しみにしていた常連たちが、グラス片手にこちらを見つめていた。
このままガッカリさせるわけにはいかない。
「よし、こうなったら――新しい酒を作るわよ!!」
「は!? そんなの急に作れるのかよ?」
フォルクが目を丸くする。
「やるしかないわ!」
私は即座に棚へ向かい、エルフの里から取り寄せた果実酒、熟成ハーブリキュール、そして森林蜂蜜を取り出した。
「まず、エルフの果実酒をベースにして…そこに、この熟成ハーブリキュールを加える!これで奥行きのある香りを出すのよ!」
「おお…さっきと全然違うな。香りが一気に濃くなった」
フォルクが身を乗り出してグラスを覗き込む。
「さらに、森林蜂蜜をひと垂らし!これでまろやかな甘みとコクが生まれるわ。そして仕上げに、氷の精霊が宿った氷でキンと冷やす!」
最後に軽くシェイクし、グラスに注ぐ。淡い黄金色のカクテルが完成した。
「名付けて――『エルフの秘宴』!!」
「ほぉ、いい色してんな…」
フォルクが喉を鳴らしながら、じっとグラスを見つめる。
「じゃあ、さっそく試飲タイムね!」
私はカウンターに並べたグラスを常連たちに差し出した。
一口飲んだ瞬間、歓声が上がる。
「…うまい!!」
「すっきりしてるのに奥行きがある!」
「果実の甘みとハーブの爽やかさが絶妙だな!」
店内が一気に活気づく。私はほっと胸をなでおろした。
「やっぱりリリィはすげぇな」
フォルクが満足げにグラスを傾ける。
「へへん、誰がすり替えたか知らないけど、こっちはもっといい酒を作れるのよ!」
腕を組んでニヤリと笑うと、フォルクが肩をすくめた。
「そりゃ確かにすげぇけど…次はちゃんと届いた時点で確認しろよ?」
「次は倍の数確認するわよ!」
「倍じゃなくて、全部見ろっての」
ドラコがくつくつと笑いながら尻尾を揺らす。
「さて、次は酒ギルドにお礼参りか?」
「まずはこの酒でしっかり稼いで、それから考えましょ!」
私はカウンターを拭きながら、心の中でニヤリとほくそ笑むのだった。
─
「…秘蔵酒を別のものと入れ替えても…折れんとはな。」
夜の静寂に紛れ、影の中で低く囁かれる。
「まぁ良い。今回はエルフの秘蔵酒そのものが手に入った。神々の杯には及ばぬとも…価値の高い品であることに変わりはない。」
闇の奥で、不気味な笑みが浮かぶ。
「これも…今後の策に利用させてもらうとしよう。」
「酒ギルドの代表には…別の手段を取るよう、伝えておかねばならんな。」
影が揺らぎ、やがて夜の闇へと溶け込んでいった。
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