第21話 酔いどれブラック・ジャック!
店の扉が勢いよく開いた。
「今夜はブラック・ジャックだ!!!」
ロングコートを翻しながら登場したのは、ギャンブラー、エゼル・ワルディア。
「また勝負?」
私はカウンター越しにグラスを拭きながら、じとっと睨む。
「そうだ! 俺は今日こそ、この酒場で最強のギャンブラーとして名を刻む!!」
フォルクが苦笑しながらジョッキを置く。
「まぁ、また負けるんだろうけどな。」
「フン! 今夜は違う!! 俺のツキは完全に上向いている!!!」
そう言いながら、エゼルはテーブルにカードを広げた。
「さぁ、ブラック・ジャックの時間だ!!」
店内がざわつく。
「また勝負か!?」
「俺も参加するぜ!」
「いや、エゼル相手なら勝てそうだしな…」
「おいこら!!俺をカモ扱いするな!!!」
「だって、事実じゃん。」
私はクスクス笑いながらカウンターから出て、テーブルの方へ歩み寄る。
「じゃあ、私もやるわ。」
「な、なにっ!!??」
店内がどよめく。
「おいおい、リリィがギャンブルに参加するなんて…」
「これは面白いぞ!」
フォルクも興味津々に見守る。
「いいのか? ブラック・ジャックは運だけじゃなく、読み合いと度胸が大事だぜ?」
エゼルがニヤリと笑う。
「問題ないわよ。」
私はカウンターに戻り、一つのボトルを取り出した。
『フォーチュン・ブランデー・スペシャル』
通常のフォーチュン・ブランデーに、さらに熟成されたスパイスを加えた特別な一杯。琥珀色の液体は深みを増し、ナッツやバニラの甘い香りが広がる。飲むたびにじんわりと体が温まり、まるで運命を味方につけたかのような気分になる――らしい。
「これを賭けましょう。勝者がこの一杯を楽しむのよ。」
エゼルの目が輝く。
「面白い…!! ならば俺も全力でいかせてもらう!!!」
ブラック・ジャック、開戦!ディーラー役はフォルク。
まずはそれぞれにカードが配られる。
エゼル:8と7、合計15
リリィ:10と6、合計16
「くっ…微妙な数字だな。」
エゼルは悩む。
「ヒットするか?」フォルクが尋ねる。
「…ヒットだ!!!」
フォルクが新たなカードをめくる。
6!!! 合計21!!!!
「うおおおお!!!!!ナイスだ!!!完璧なブラック・ジャック!!!」
店内がどよめく。
「おいおい、こいつ本当に運が上向いてるんじゃねぇか?」
「珍しいな…」
エゼルはドヤ顔で私を見つめる。
「さぁ、リリィ、お前の番だ!!俺を超えられるか!?」
私は微笑みながら、じっと自分のカードを見つめる。
10と6、合計16……
「さて、どうしようかしら。」
「ヒットするのか? スタンドか?」
私は少し考え――。
「ヒットよ。」
「ほう…度胸あるな!」
フォルクがカードをめくる。
5!!! 合計21!!!!
「…っ!?」
エゼルが凍りつく。
「おおおおお!!! まさかの同点!!!」
店内がざわめく。
フォルクがゆっくりと頷き、次のルールを告げる。
「引き分けの場合、サドンデスだ。」
「サドンデス……!?」
「次の1枚をめくり、より数字が大きかったほうが勝ち。」
エゼルはニヤリと笑う。
「いいだろう…ここまで来たら、最後まで勝負だ!!!」
私は静かにグラスを置き、カードに手を伸ばす。
「ええ、最後の一手ね。」
エゼルのカードが先にめくられる。
8!!!
「ふっ…これはなかなかの数字だぜ?」
「さて、じゃあ私も。」
私はカードをめくる。
9!!!!
「…なっ!!??」
エゼルが顔を引きつらせる。
「…リリィの勝ちだな。」フォルクが静かに宣言した。
「おおおおお!!!!! リリィが勝った!!!!」
「すげぇぇ!!! ギャンブラーを倒したぞ!!!」
店中が歓声に包まれる。私はニッコリ微笑みながら、テーブルの上の『フォーチュン・ブランデー・スペシャル』を手に取った。
「じゃあ、私がいただくわね♪」
グラスを傾け、一口――。
「…はぁ、美味しい♪ 勝利の味ね。」
エゼルはぐったりとうなだれる。
「まさか…俺が負けるとは…!!!」
私はクスクス笑いながら、エゼルの肩をポンと叩いた。
「運だけじゃなくて、冷静な判断も大事よ?」
「ぐぬぬ…次こそは絶対に勝つ!!!」
エゼルは拳を握りしめ、リベンジを誓うのだった――。
しかし――
「あれ? ちょっと待って…?」
私はふらりと体を揺らし、フォルクが慌てて支える。
「おい、リリィ!?」
「…えへへ、なんか、ちょっと酔いが…」
「いや、お前、自分の酒の弱さ忘れてたのか!!?」
カウンターにもたれかかりながら、私はゆるりと笑う。
「勝ったのに…営業、続行できな…い…」
ドサッ!!
「リリィィィィィィ!!??」
店内大騒ぎ。結局、ブラック・ジャック勝負は私の勝利に終わったものの、その後の営業は強制終了となった。
「くそぉぉぉ!!!次こそは勝つ!!…って、店閉めるなぁぁぁ!!!」
「無理…私…寝る…」
こうして、酔いどれ小屋はまたもや混乱の夜を迎えたのだった――。
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