第20話 酔いどれ水の伝説譚!
昼下がりの酔いどれ小屋は、今日もいつものように賑やかに静か――いや、やっぱり矛盾してる?でもそんな感じ。開店直後のほんのりまどろむような時間、常連たちは各々のグラスを傾け、カウンターには私とドラコ。そして、その隅っこには、酒と共に人生を渡り歩いてきたと噂される謎の老人、オズワルド・ペール。
このオズさん、元冒険者だったとか、いや実は王族の落とし胤だとか、はたまたただのホラ吹きジジイだとか、諸説ありすぎて真相不明。けれど、そんな彼が今日はいつもと違う。グラスを傾けながら、じっくりと私を見据えてこう言った。
「リリィ、今日は特別な話をしてやろう」
「特別?オズさん、飲み過ぎて気が大きくなったんじゃないの?」
軽口を叩きつつも、内心ワクワクが止まらない。“特別”だよ?そんな言葉を聞かされたら、好奇心が暴走するのは当然のこと。
オズさんが語り出したのは、水の国――海に浮かぶ無数の島々で構成された異国の話。そこでは酒がただの飲み物じゃなく、人生の節目節目を祝う神聖な象徴として扱われているんだとか。その言葉を聞いた瞬間、私の脳内にある“お酒イノベーションスイッチ”がカチッと音を立てて作動した。
「それ、再現しちゃお!」
言ったら最後、もう手は止まらない。
まず、ベースは清らかな水のように透明なライススピリッツ。ふわっと漂う繊細な香りに、フレッシュな柑橘リキュールを忍ばせる。そして、爽やかさを引き立てるために、エルフの森で採れる最高級のミントをほんのひと摘み。そして、極めつけは、「水晶砂糖」をイメージした青白く光る錬金シュガー。ポトリと落とすと、まるでグラスの中に小さな水の精霊が舞い降りたかのように光が揺らめく。美しい。もう見た目だけで飲みたくなる魔法の一杯――完成!
恐る恐る口をつけてみると、ひんやりとした清涼感が舌を滑り、柑橘の軽やかな甘みが追いかけてくる。そして最後にミントの優しい余韻がすーっと広がり、体の奥から爽快な風が吹き抜けるよう。これはもう、ただの酒じゃない。まるで水の国の祝福そのもの――「アクアヴィータ」!
「ほらオズさん、特別なお酒にふさわしい一杯よ!」
差し出したグラスを手に取るやいなや、オズさんは一口、そしてもう一口。途端に目を見開き、驚きと歓喜が入り混じったような顔になった。
「こ、これは…まるで本物じゃないか!」
その言葉に、私のテンションは一気に最高潮。けれど、ここからが本当のドタバタ劇の幕開けだった。
「もっと飲ませろ!」
調子に乗ったオズさん、止まらない。次々とグラスを空けるたびに、話のテンションも急上昇。「水底には精霊がいてな、こう言ったんだ!『ここを通らせろ!』って!」身振り手振りを交えながらの熱弁に、いつしか店内は大爆笑。
「おいおい、飲み過ぎだろ!」
ついに耐えかねたドラコがグラスを取り上げに動く。が――オズさん、まさかの死守。
「誰にも渡さん!!」
そう叫びながら後ずさるが、後ろはカウンターの端。バランスを崩し、あわや転倒――って、ヤバい!
慌てて支えようと飛び出した私は、その瞬間、足元にぶちまけられたミントを踏んだ。
つるっ。
「あっ…」
次の瞬間、見事なスライディングで床へダイブ。結果、オズさんもバランスを崩し、私の隣へ豪快に倒れ込む。
「ぎゃははははは!!」
カウンターの上で、ドラコが腹を抱えて爆笑。私はもう、床に転がったまま遠い目をするしかない。
最終的に、店は大混乱。でも、お客たちは大笑い、アクアヴィータは大好評。酔っぱらったオズさんが帰り際、満足げにニヤリと笑った。
「次は火の国の話をしてやろう…!」
また絶対に面倒くさい展開になる予感がする。でも、ちょっとだけ楽しみな自分もいるのが、悔しい。
翌日、オズさんはまたカウンターの隅っこで新たな冒険譚を始めた。その日も当然のごとく、ドタバタな幕が上がるのだった。
ページを下にスクロールしていただくと、広告の下に【★★★★★】の評価ボタンがあります。もし「続きを読みたい!」と思っていただけた際は、評価をいただけると嬉しいです。Twitter(X)でのご感想も励みになります!皆さまからの応援が、「もっと続きを書こう!」という力になりますので、どうぞよろしくお願いいたします!
@chocola_carlyle




