第19話 エルフ秘蔵酒の力!
朝、酒場の扉を開けた瞬間、すでに行列ができていた。
「え、なにこれ? うち、開店前から並ぶような店だったっけ?」
私は寝ぼけた頭を抱えながら、店の前にぎっしり詰まった客たちを眺める。
「リリィ!!うわさのエルフの秘蔵酒、もう飲めるんだろ!?」
「昨日の夜から待ってたんだぞ!!」
「開けろおおおお!!」
扉がバンバン叩かれ、酒場が開くや否や、客たちが雪崩れ込んできた。
「…ちょっと、朝っぱらから酒騒ぎ!? うちは夜の酒場よ!!」
「そんなこと言ってる場合じゃねぇ!! 早く注げ!!」
フォルクが寝ぼけた顔でジョッキを掲げる。
「おいおい、朝から酒をあおるのはどうなんだ?」
「酒があるなら時間なんて関係ねぇ!!」
「まぁ、それも一理あるわね…」
私は肩をすくめながら、カウンターの奥から特製の樽を取り出した。
「よっしゃあ!!いくわよ、酔いどれ小屋が誇る最高の一杯!!」
エルフの秘蔵酒がグラスに注がれる。琥珀色の液体が、ゆっくりと揺れながら光を帯び、森の香りがふわりと広がる。
「…これは…!」
フォルクがゴクリと喉を鳴らし、グラスを手に取る。
「いただきます……」
一口――
「っくぅぅぅぅぅ!!!」
フォルクは一瞬、言葉を失ったあと、魂を震わせるように叫んだ。
「うまい……!!なんだこの深み!!」
周囲の客たちも、驚きの声を上げながら次々とグラスを傾ける。
「香りがすごい…まるで森の中にいるみたいだ…」
「なのに、スッと消えるこの後味…甘くて優雅なのに、飲み飽きない…!!」
「これは…やばい酒だ…!!!」
たちまち店内は興奮の渦!!
ジョッキを掲げる音が響き渡り、酔いどれ小屋は未曾有の大盛況!!
「リリィ!! 追加!! もう一杯!!」
「くそっ!! もう他の酒じゃ満足できねぇ!!」
私は満足げにニヤリと笑った。
「でしょ? 最高の一杯って、こういうことよ!!」
ところが、その熱狂は予想外の事態を招いた。
「お初にお目にかかる…」
扉が再び開き、今度は静かな気配が流れ込む。
「ここが、エルフの秘蔵酒を出しているという店か?」
現れたのは、王宮の紋章をつけた男。
「王宮の…使い?」
「陛下がこの酒の噂を聞きつけ、ぜひ一樽分けていただきたいと仰せだ」
「…は?」
店内が凍りつく。
「王宮が、うちの酒を?」
「ちょ、ちょっと待って! うち、そんな格式高い店じゃないんだけど!?」
「陛下はただ純粋に、この酒を味わいたいと…」
「ふっ……」
「ふふふっ……」
「 すっごいじゃない!!!」
私はカウンターを叩いて笑い転げた。
「まさか王様の口に入るなんてね!!」
こうして、私は王宮専用の一杯を考案することにした。
『王の祝杯』
エルフの秘蔵酒に、妖精の蜜を一滴加え、黄金柑橘のエッセンスをしぼり、神樹の葉を浮かべる。仕上げに魔法の炎を灯し、芳醇な香りを際立たせた、まさに王にふさわしい一杯。
「さぁ、どうぞ!」
王宮の使者が静かにグラスを手に取る。
一口――
「…っ!! こ、これは…!!!」
「どう? 王様も気に入ってくれるかしら?」
使者は震える手でグラスを置き、力強く頷いた。
「…陛下に、確かにお届けしよう」
「よろしく頼むわね!」
こうして酔いどれ小屋は、エルフの酒の力で大繁盛!!
ついには王宮にまで名が轟くことになった。
しかし――
「リリィ……」
夜が更け、ようやく店が落ち着いたころ、フォルクがカウンター越しに言った。
「この店、もう客が多すぎて、あふれてるんだけど?」
「…え?」
「外に並んでる客、明日まで待つって言ってるんだけど?」
「…ええっ?」
「それどころか、王宮関係者が増えてるんだけど?」
「…えええええっ!!?」
こうして、酔いどれ小屋はエルフの酒の力でとんでもない繁盛店になり、私は仕込みと営業で眠る暇もない日々を送ることになったのだった……!!
「うぅぅ…お酒は幸せを呼ぶけど、忙しすぎるのは幸せとは限らないわよぉぉぉ!!!」
─
「…まさか、エルフの秘蔵酒とはな…」
夜の帳が下りた街の片隅、影の中で低く囁かれる。
「酒ギルドを通じた営業妨害で魔法樽を手放させる作戦…これは思った以上に手こずりそうだ。酒ギルドだけでは成し得ぬ可能性が出てきたな…」
長い沈黙の後、闇の奥から静かな声が落ちる。
「…次の一手を、模索し始めねばならん。」
闇の中でわずかに衣擦れの音が響き、影たちは音もなく夜へと溶けていった。
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