第15話 消えた酔いどれ小屋!?
昼下がり、いつものように店を開けて、今日の仕込みを始めようとしたその時。
「さーて、今日も美味しいお酒を用意するわよ!」
なのに…。
「…あれ? 誰も来ない?」
おかしい。そろそろフォルクが「昼酒は最高だな!」とか言いながら入ってくるはずだし、ドラコもカウンターの上でつまみを狙ってる頃。
「まさか…今日は定休日とかじゃないわよね?」
いやいや、そんなわけ――と思って外に出たら、驚愕。通りを行き交う人々が、まるでそこに何もないかのように、酔いどれ小屋の前を素通りしていく。
「ちょ、ちょっと!! うちの店はここよ!?」
声をかけても、誰も気づかないどころか、怪訝そうに空間を見回して通り過ぎていく。
「…まさか、認識阻害の魔法!?」
「おいおい、なんだこの静けさ…」
そこへ、フォルクがやってきた――いや、やってこようとして、店の前でぴたりと止まる。
「…ん? なんだ、ここ…妙に落ち着かねぇな…」
「フォルク!! ここよ、ここ!!」
「…?」
「ここ!! 酔いどれ小屋!!!」
「…酔いどれ小屋…?」
フォルクは眉間に皺を寄せ、何かを思い出そうとするかのように考え込む。やばい、完全に魔法がかかってる!!
「おいフォルク! 何してんだ?」
そこへ、ドラコがひょこっと飛んできた。
「酔いどれ小屋に行くんじゃなかったのか?」
「え? でも…あれ?」
フォルクが混乱する中、ドラコはスッと私を見つけた。
「ん? おいリリィ、何してんだ?」
「…ドラコは普通に認識してるのね」
「そりゃそうだろ? 俺は酔いどれ小屋の看板ドラゴンだからな!」
「さすがマスコット…じゃなくて、問題はこの魔法よ! 誰かが認識阻害を仕掛けて、うちの店に客が来られないようにしてるの!」
「…まさか、また酒ギルドの嫌がらせか?」
「たぶんね!」
「んだよ、いい加減にしろよな…! ま、解決すりゃいい話だろ?」
ドラコはふわりと飛び上がると、大きく息を吸い込んだ。
「おいおい、まさか――」
「泡ブレス!!!」
ボフッ!!!!!!
ドラコの口から大量の泡が吹き出し、店の周囲を包み込んだ。
すると――
「…あれ!? ここ、酔いどれ小屋じゃねぇか!!?」
突然、フォルクが正気に戻ったかのように店を見て、ガバッと入ってきた。
「おおおおおい!!! 何だこの店は! さっきまでどこにあったんだ!?」
「やっと気づいたわね…ドラコの泡ブレス、魔法の効果を乱してくれたみたい!」
すると、次々と通りの人々が酔いどれ小屋を認識し始める。
「おい、ここに酒場なんてあったか?」
「いや、俺たちが通ってた店だろ!!」
「おいおいおい、昼酒が消えたのかと思って焦ったぞ!!」
常連たちが続々と戻ってくる。
「ふぅ…これで一件落着ね!」
「いやいやいや、こんなの完全に酒ギルドの仕業だろ!! もう、対策考えないとまずいんじゃねぇか?」
フォルクがジョッキを手に取りながら、渋い顔をする。
「まぁ、考えとくわ…とりあえず、乾杯しましょ!」
私はカウンターに戻り、エルフの森のスパーク・エールを用意する。琥珀色に輝く液体は、ふわっと爽やかな柑橘の香りを漂わせる。ひとくち飲めば、シュワっと軽やかな炭酸と、ほんのり甘みのあるモルトの風味が広がる――これぞ、昼酒の極み!!
「よーし、改めて営業開始よ!! 今日は盛り上がるわよ!!」
「「かんぱーい!!」」
こうして、酔いどれ小屋・消失事件は無事解決。
でも、こんな手を使ってくるなんて…酒ギルドも、しつこい連中ね!
─
「ほう…認識阻害の魔法を突破するとはな。」
黒いフードの奥から低い声が漏れる。
「光と闇を応用した複合魔法だぞ…? 酒ギルドだけでは心もとないと思い、我らが力を貸してみたが…」
「やはり、あのドラゴンの力は相当なものか。魔法を弾き返す力が鱗に宿っているやもしれん…」
闇の中で、誰かが息を潜める。
「そもそも、泡を操るドラゴンなど聞いたことがない。」
「それを手懐けるリリィ・グラスフィル…あの女もまた、普通ではないな…」
沈黙が支配する。やがて、闇の中で誰かが不気味に笑った。
「これは…ますます面白くなってきた。」
影たちは静かに策を巡らせながら、夜の闇へと消えていった。
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