第11話 禁断の魔植物をおつまみに!?
「こいつが…マンドラゴラか。」
フォルクが険しい顔をして、腕を組みながら目の前の奇妙な植物を睨みつけている。鬱蒼とした森の奥深くで見つけたそれは、一見ただの植物に見えるけど、まるでそこだけ空気がピリつくような威圧感を放っている。
「これ、引っこ抜いたら絶叫して、抜いたやつを即死させるんだよな。ほんと、いい加減にしてくれって感じだぜ。」
フォルクが数歩後ずさりしながら呟く。
「大丈夫よ、大丈夫! こんなの、ちょっと考えれば解決できるわ。」
私は自信満々に笑ってみせたけど、内心では慎重に策を練る。失敗すれば、絶命はしなくても厄介なことになるのは確かだ。
「音が伝わったら危ないなら、音が伝わらなければいいだけの話でしょ?」
まずは水の魔法で、マンドラゴラをぷるぷるの透明な膜で包み込む。
「ほら、これで音は水に閉じ込められる!」
「お前、ほんと大胆すぎだろ……。」
呆れたようなフォルクの声が聞こえるけど、後ろでしっかり剣を構えているのがなんとも頼もしい。
万全の態勢を整えた私は、マンドラゴラの茎に手をかけた。
「いっくわよ…せーのっ!」
ぐいっと引っこ抜くと、水の膜の中でプクプクと泡が立つだけで、あの恐ろしい絶叫は起きない。
「…成功!」
私は勝ち誇った笑みを浮かべながら、マンドラゴラを高々と掲げた。
「マジでやりやがった…。相変わらずただの酒場の店主じゃねえな。」
フォルクが感心したように肩をすくめる。
「冒険者だった頃の腕が錆びてないだけよ! さ、次の素材も探していきましょ!」
その後も森を巡り、「サンシャイングラス」や「トリックリーフ」、「ブルームフラワー」といった珍しい植物を次々と手に入れる。
店に戻ると――
「ただいまー!」
夕暮れ前には仮店舗「酔いどれ小屋」に戻れた。カウンターで寝そべっていたドラコが、しっぽを揺らしながら顔を上げる。
「お、戻ったか。意外と早かったじゃねぇか。」
「はい、これ! マンドラゴラを使った新しいおつまみよ!」
私は「マンドラゴラチップス」をさっそく仕上げ、ドラコの前に出した。
マンドラゴラを薄くスライスし、エルフハーブオイルでカラッと揚げ、仕上げにほんのりマナ塩を振った一品だ。
ドラコは一つ口に放り込むと、金色の瞳を見開いて叫んだ。
「う、うめぇ! これ、マジで最高じゃねぇか!」
「でしょ?」
私は得意げに微笑みながら、次の準備に取り掛かった。
夜になると――
常連の冒険者たちが次々と店に集まり、マンドラゴラチップスを口にすると、一様に目を輝かせた。
「なんだこれ! 香りがすげぇ…しかも酒が止まらねぇ!」
「これがマンドラゴラなのか!? あの伝説の魔植物をおつまみにするなんて、リリィ、天才かよ!」
「マンドラゴラの絶叫を聞いたら死んじまうって言うが、このつまみが美味すぎて俺たちが死んじまいそうだぜ!」
「ほらね、おつまみが変わると酒の味も引き立つでしょ?」
私は自信満々にグラスを拭きながら、冒険者たちの笑顔を眺めた。
店内には笑い声と賛辞が溢れ、この日も「酔いどれ小屋」は笑いと美味しいお酒に包まれた。
「やっぱり、お酒とおつまみは最高の冒険よね。」
グラスを拭く手を止めて、私は心の中でそう呟いたのだった――。
─
「マンドラゴラを、まったく問題なく確保し…それどころか、調理までしてのけるとはな…」
黒いフードの奥で、低い声が漏れる。
「ふ…魔法樽の奪還に利用できるかと思ったが、どうやら甘かったか。」
「だが、世界は広い。未だ未知のアイテムも数多く存在する…」
影たちは互いに視線を交わす。
「ひとまず、酒ギルドに任せよう。我々が直接手を下すより、やつらの手で事が動いた方が好都合だからな。」
「だが、万が一に備え、こちらも奪還に向けた“保険”をかけておく。」
静寂の中、ただ一言、鋭く響く。
「はっ!」
影たちは再び闇へと溶け、計画の歯車が密かに回り始めた。
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