第6話 フィリア、来訪!
朝日が柔らかく差し込む仮店舗「酔いどれ小屋」。魔法樽が輝きを放ち、私は新作のお酒にひたすら集中していた。静寂とスパイスの香りが満ちるこの時間、最高のひととき――そう思っていたのに、扉のベルがチリンと音を立てた。
「いらっしゃいませ!」
反射的に顔を上げた私の目に飛び込んできたのは、銀髪が腰まで揺れ、エメラルドグリーンの瞳が煌めくエルフの少女の姿。
「フィリア!? なんでここに?」
族長がそういえば行方不明になったって言ってたけど、ちゃんと帰ってきたじゃない!やっぱりリーヴァンは心配し過ぎなのよ!そうやって私が色々と考え込んでいると、フィリアはおどおどしながら答えた。
「お、お姉ちゃんが…お店を爆発させたって聞いて…心配で…」
――爆発くらい普通のことよ! そう言いたいけど、心配そうに瞳を潤ませる妹を前にすると、なんとも言えない気持ちになる。
「爆発って…ちょっと派手になっちゃっただけよ。普通の酒作りの過程!」
私は胸を張って答えたが、フィリアの視線は疑いと呆れが混ざったままだ。
「普通じゃないよ、お姉ちゃん…。族長だって怒ってたんだから…」
――また族長の説教リピートか! 心の中でため息をつきつつ、ふと彼女の登場そのものが気になった。
「で、さ。里から抜け出してきたの? 召喚魔法の研究は大丈夫なの?」
私は腕を組み、少しだけ疑わしげに彼女を見つめる。
フィリアはぎくりと目を泳がせながら、か細い声で答えた。
「そ、それは…その、ちょっと休憩っていうか…」
「ふーん、休憩ねえ。族長がこれを知ったら、召喚魔法どころか里全体が揺れるんじゃないの?」
私は意地悪く言ったけど、フィリアの肩が小さく震えるのを見て、さすがに少し反省する。
「まあ、いいわ。せっかく来たんだから、手伝いでもしていきなさい!」
私がそう促すと、フィリアはほっとしたように頷いた。
フィリアがカウンターの隅で恐る恐る作業を始めたけれど――その動き、見ていられない! グラスを倒すわ、盛り付けたつまみをひっくり返すわ、大惨事の連続だ。
「フィリア! あんた、本当に研究者なの? これじゃあ研究どころか、召喚したモンスターが暴走するんじゃないの?」
私は頭を抱えたが、フィリアはしょんぼりとうつむく。
「ご、ごめんなさい…私、こういうの苦手で…」
――ちょっと不器用すぎるでしょ! でも、なんだか放っておけない。
「まあいいわよ。最初は誰だってそういうもんよ! 次はもっと頑張りなさい!」
軽く背中を叩くと、フィリアは控えめに「うん……」と頷いた。
その日の深夜、店の片隅で静かに座るフィリアを見て、私は思い立った。
「せっかく里からわざわざ来たんだから、リラックスできる一杯を作らなきゃね!」
カウンターに立った私は、フィリアのための特製カクテルを作り始めた。
グラスに注いだのは、淡いオレンジ色の液体。ライトなエルフリキュールをベースに、オレンジエッセンスを加え、仕上げに結晶化させたマナの粒をひとつまみ散らす。キラキラと光るその姿はまるで夜空の星。
「はい、『シルバースパーク・オレンジ』よ! 銀髪のフィリアにぴったりでしょ?」
フィリアは恐る恐るグラスを受け取り、一口飲む。そして次の瞬間――
「…お姉ちゃん、これすごく美味しい! 甘くて爽やかで…こんなお酒なら飲める!」
瞳を輝かせるフィリアに、私も思わずにっこり笑ってしまった。
「でしょ? ほら、もっと飲みなさい!」
私はグラスを軽く叩きながら促す。
グラスを飲み干したフィリアは、どこか晴れやかな表情で立ち上がる。
「お姉ちゃん、ありがとう。私、頑張ってみる! 召喚魔法の研究も!」
その胸を張った姿に、少しだけ頼もしさを感じる。
「そうそう、その調子! あんた、やればできるんだから!」
「でも…爆発はもうやめてね?」
「分かってるってば!」
そう答えながら、私はグラスを拭く手を止め、ふと窓の外を見る。夜空には、マナの粒みたいな星がまたたいていた。――本当に、分かってるのかは、まあ、これからのお楽しみよね。
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