第4話 草じゃなくて、芸術!
「おい、エルフの姉ちゃんよ。お前んとこのおつまみ、本当に魚も肉もなしなのか?」
新店舗の隣に居を構える魚料理専門居酒屋の店主、レオが腕を組んで立ちはだかる。その視線は威圧的、口調は挑発的。この組み合わせ、どう考えてもイラっとする。
「そうよ。それがどうかしたの?」
私は作り笑顔で答えるものの、内心では拳を握りしめていた。
「どうかしたもこうかしたもねぇ! 酒のつまみってのは、魚や肉があってこそだろ? お前んとこの草なんざ話にならねえ!」
草!? あえてその言い方をしてくるなんて、わざとに決まってる。
「草っぽいってよくも言ったわね! いいわ、勝負よ! あなたの魚料理と私の植物料理、どっちが酒に合うかはっきりさせましょう!」
「いいぜ! 判定は冒険者ギルドの連中に頼むとして、正々堂々と勝負しようじゃねえか!」
レオが自信満々に返してくる。ふん、上等よ!この前は肉を打ち負かしたんだから、魚も同じように返り討ちにしてあげるんだから!
ギルドの大広間は、冒険者たちの熱気と期待で溢れていた。酒の匂いが漂う中、最前列にはすでに楽しむ気満々の連中が陣取っている。
レオが出したのは、「潮風亭特製・炙りミスティフィッシュの香草マリネ」。魔法の海「ミスティラグーン」でしか獲れないという希少なミスティフィッシュ。その透き通った白身がふっくらと炙られ、表面には香ばしい焼き目がついている。オリーブオイルが輝きながらハーブと絡み合い、燻製の香りが会場中に漂う。さらに銀色の食用花が添えられ、まるで一枚の絵画のようだ。
「どうだい? 見るだけで飲みたくなるだろう?」
レオが勝ち誇ったように微笑むと、冒険者たちから「これだよ、つまみってのは!」と歓声が上がる。
一方、私が用意したのは「燻製ハーブとロータスのクリスプ」。繊細なロータスのスライスをカリカリに揚げ、特製の燻製ハーブとともに美しく盛り付けた。ハーブの爽やかな香りがほんのり漂い、見た目の鮮やかさは十分。だけど、冒険者たちの反応はレオの料理ほど派手じゃない。
まずはレオの「炙りミスティフィッシュの香草マリネ」から。冒険者たちは口々に絶賛する。
「うめぇ!」「魚の旨味が酒を誘う!」
レオはその声を聞いてますます自信満々な表情だ。
次に私の「燻製ハーブとロータスのクリスプ」。冒険者たちは一口食べてから少し首をかしげる。
「香りはいいけど、ちょっと淡白すぎるかもな。」
「これだけだと、酒には物足りない感じだ。」
その言葉に、レオが勝ち誇ったように言い放つ。
「ほら見ろ! 酒には俺の魚料理が最高だって話だ!」
でも、私は黙ってグラスを手に取る。勝負はまだ終わっていない。
「まあまあ、判定はまだ先よ。」
冒険者たちが「酒はまだか!」と騒ぎ始めたタイミングで、私は新作酒を満を持して披露する。
「さあ、これよ。『フローラルスパークワイン』。これと一緒に楽しんでみて。」
琥珀色に輝く液体がグラスに注がれ、花々のような芳醇な香りが空間を満たす。それはただの飲み物ではなく、冒険者たちの舌に魔法をかけるような一杯。
彼らがワインとつまみを一緒に口にすると――。
「おい、これやべぇぞ!」
「さっきは物足りなかったけど、この酒と一緒だとすげぇ美味い!」
冒険者たちの反応は一気に変わり、歓声がどっと上がる。
「何だこれ! これがマリアージュってやつか!?」「苦味と甘味が酒で引き立てられてる!」
冒険者たちが次々と酒とつまみを堪能する中、レオの顔がみるみる引きつっていく。
「な、なんだよそれ! そんな合わせ技ありかよ!」
私は胸を張り、勝利を確信しながら言い放つ。
「当然よ! 酒とつまみの組み合わせが最高じゃないと、お酒は本当の力を発揮しないんだから!」
冒険者たちが一斉に判定を下す。
「勝者! リリィの『燻製ハーブとロータスのクリスプ』!」
ギルドの大広間は歓声と拍手で埋め尽くされる。私は胸を張り、勝利の余韻に浸る。
「…認めるぜ、姉ちゃん。お前のつまみ、確かにすげぇよ。」
悔しそうに頭をかきながら、レオが店にやってきた。
「分かればいいのよ! 次の勝負も楽しみにしてるわ。」
私が微笑むと、レオは苦笑いしながら背を向けて帰っていった。
冒険者たちの声がギルド中に響く。
「リリィ、次はどんな酒とつまみを出すんだ?」
こうして、私の仮店舗「酔いどれ小屋」は、ますます賑やかに盛り上がりを見せるのだった――。
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