第3話 お酒と共に新たな冒険!
「リリィ、お前、最近の稼ぎどうなんだ?」
仮店舗の扉を勢いよく開けて入ってきたのは、冒険者ギルドのギル長――ガラハッド。その筋骨隆々な体格に、太い声。そして、あの豪快な笑顔。旧店舗にも何度も顔を出してくれたけど、まさかこの仮店舗まで足を運んでくれるなんて、ちょっと意外。
「それなりにやってるわよ。」
グラスを磨きながら軽く返事をする。正直どう答えるべきか迷うけど、とりあえず平常心を装うしかない。
「嘘つけよ。その顔にはっきり書いてあるぞ――『金がないです』ってな!」
カウンターに肘をつき、ガラハッドが大声で笑う。
「うるさいわね! 酒場はちゃんとやってるんだから!」
私は睨みつつ言い返す。でも、図星を突かれた気がして、胸の奥がちくりと痛むのは否めない。仮店舗の狭さ、旧店舗ほどの設備もない現実……売上が落ち込むのは当然。
「まあまあ、そんなに突っかかるなよ。俺はお前のためを思って――」
グラスを傾けた彼の表情がふと変わり、にやりと笑みを浮かべる。
「――ギルドに戻らねえかって、話だよ。」
「えっ?」
思わず手が止まる。
「お前、オリハルコンクラスだったろ? ギルドじゃ伝説級の冒険者だったじゃねえか。そんなお前が店にこもってるのは惜しいと思わねえか?」
惜しい、ねえ。そう言われるとちょっと悪い気はしない。でも――
「ギルドに戻れば、稼ぎなんてあっという間だぜ。金がないなんて悩む必要もなくなる。」
ガラハッドはグラスをくるくると回しながら言う。
「でもね…」
私は一つ息をつき、磨いていたグラスをカウンターにそっと置いた。
「冒険者として稼ぐのも悪くないけど、それじゃ飲む時間がなくなるじゃない!」
その言葉が出た瞬間、店内の空気が一瞬固まる。そして――。
「ははははは!」
ガラハッドが腹を抱えて笑い始めた。
「お前らしい理由だな! 酒が最優先かよ!」
「そうよ!」
私は胸を張り、堂々と答える。
「お酒を作って、それをみんなと一緒に楽しむのが私の人生なの。冒険者としての腕も誇りに思ってるけど、今の私にはこっちのほうが大事なのよ!」
ガラハッドは笑いながら肩をすくめる。
「まあ、お前が決めたなら、それでいいさ。でも、困ったらいつでもギルドに戻って来いよ。待ってる奴はたくさんいるんだからな。」
「ありがとう。でも、今の私にはこの酒場を守ることが一番大事なの!」
その日のおすすめは、『エルフの祝杯ハーブワイン』。
魔法の森で摘まれたハーブを丁寧に発酵させ、時間をかけて熟成した逸品だ。グラスに注げば、淡い金緑色の液体がきらめき、森を彷彿とさせる爽やかな香りが広がる。口に含めば、優雅なハーブの苦味と、追いかけるように広がるフルーティーな甘さが絶妙なバランスを奏でる。
お客たちはワインを片手に歓声を上げ、店内は活気に満ちていく。
ガラハッドは満足げにグラスを掲げた。
「結局、お前にとっての冒険はここにあるってことだな!」
私は笑って頷く。
「そうよ、ここが私の新しい冒険の舞台だから!」
こうして、『酔いどれ小屋』の新たな一日が、笑いと美味しいお酒に包まれて幕を閉じたのだった――。
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