第1話 酔いどれ小屋、スタート!
はーい!みんな覚えてる?酔いどれ亭の店主、リリィよ!煌めく金髪に輝くエメラルドグリーンの瞳、それに赤いエプロンがトレードマーク!え?時々世界樹の冠かぶってるって?ま、それも私らしさってことで!あと忘れちゃいけない相棒のドラコ、看板ドラゴンね。
冒険者時代のたくわえを全部突っ込んで、夢のお店『酔いどれ亭』をオープン!やっと軌道に乗り始めたと思ったのに、謎の黒い連中が邪魔してきてさ。おかげで魔法樽が爆発、お店もドッカーン!ほんっとありえない!あの時は泣きたいのを通り越して叫んだわよ!
でも、ここで終わるリリィじゃないんだから!落ち込む暇があったら立ち上がれってね!その名も仮店舗『酔いどれ小屋』を構えて営業再スタート。どんなピンチだって、お酒とおつまみがあればなんとかなるってもんよ!
みんな、見ててよ!この仮店舗から、奇跡の復活劇をお届けするんだから!
─
「よし、新しい場所で再スタートよ! これ以上ないくらい完璧にやるんだから!」
仮店舗のカウンターを勢いよく叩き、気合いを入れる。『酔いどれ亭』を一度失った私だけど、ここでへこたれるわけにはいかない。常連さんたちもこの店を待ち望んでくれているんだから、新しい店が完成するまで、ここで全力を尽くすのよ!
でも、この仮店舗、正直ちょっと狭いし、装飾も寂しい。元の店にあったあの素敵な酒瓶の棚とか、カウンターの木目が美しかったテーブルとか、全部が懐かしい。でも、常連さんたちが来てくれれば、この小さな店でもきっと賑やかになるはずよ。
「リリィ、そんなに張り切って転ぶなよ。」
カウンターの隅でくつろぐドラコがのんびりと言う。猫サイズのドラゴンで、深い青い鱗を虹色に輝かせながら、尻尾をゆったりと揺らしている。常連さんたちにもすっかり馴染んでいて、看板ドラゴンとしての地位をしれっと確立してるけど……働く気はゼロ。
「黙ってて! 私は完璧にやり遂げるんだから。」
今日の主役は『レインフォレスト・エール』――魔法の森の樹液を使った、爽やかで香り高いビール。注がれると、エメラルドグリーンの液体がグラスの中で煌めき、まるで森の中にいるような清涼感を漂わせる。ふわりと鼻をくすぐるのは、新緑を思わせるさわやかな草木の香り。ひと口含めば、まずは柔らかな甘みが舌の上を広がり、次にほろ苦さと共にスパイスのような刺激が後味を引き締める。この一杯で、常連さんたちの心をもう一度掴むんだから!
扉のベルがチリンと鳴り、懐かしい顔ぶれが次々と入ってくる。
「おっ、リリィ! やっと店が戻ったな!」
「仮店舗でも全然いいぞ! ここに来れば酒が飲めるんだからな!」
「みんな、来てくれてありがとう!」
嬉しさを隠せない私。旧店舗を失ってから、こうしてまた顔を合わせられるなんて……絶対、成功させなきゃ!
「リリィ、今日のおすすめは?」
常連の一人がカウンターを叩きながら笑顔で聞いてくる。
「待ってました! 今日のおすすめは『レインフォレスト・エール』よ! 魔法の森を味わえる爽やかな一杯、試してみて!」
「じゃあ、それ四つ頼む!」
注文が入った瞬間、私のテンションは最高潮。記念すべき仮店舗での初注文、完璧に決めるわよ!
「お任せあれ!」
張り切ってグラスを手に取る…が、勢い余ってそのうちの一つを床に落としてしまう。
カランッ!
「あっ!」
床に転がるグラスを見て、思わず固まる私。だけど、常連さんたちは気にした様子もなく大笑い。
「おいおい、リリィ! 相変わらずドジだな!」
「前の店でもグラス割ったの何回見たか覚えてねえぞ!」
「うっ…今回はちゃんとやるつもりだったのに!」
顔を真っ赤にしながら新しいグラスを取り出し、エールを注ぎ始め、常連さんたちに差し出す。彼らはニヤニヤしながら一口飲むと、目を輝かせた。
「これ、うまいじゃねえか!」「やっぱりお前の酒だな、リリィ!」
「ふふっ、でしょ?」
ほっと一息ついたその瞬間――。
「リリィ、つまみはまだか?」
別の常連が声を上げる。
「待ってて! 今すぐ持っていく!」
私は厨房に駆け込み、『フェアリーフィグの燻製』を皿に盛り付け始めた。妖精の手で育てられたイチジクは、熟した果肉がほんのり赤みを帯び、スモーキーな香りが立ちのぼる。燻製により凝縮された甘みが舌をくすぐり、特製スパイスが香りに複雑さを与える。この一皿がエールをさらに引き立てるんだから!
「これで完璧!」と皿を持ち上げた瞬間――
バサッ!
「ああっ!」
手元が狂ってイチジクが床に散乱する。
「リリィ、またかよ。」
カウンターの上からドラコがじとっとした目で見下ろしてくる。
「俺が片付けてやる。食べ物を無駄にするなんてドラゴンとして許せねえ!」
「落ちたものは食べないの!」
でも、ドラコはそんなことお構いなしに飛び降り、イチジクに突進した。
パクッ!
「うん、甘みとスパイシーさが絶妙だな。」
「褒める前に止めてよ!!」
常連たちは大爆笑。
「この店、やっぱ最高だな!」
「ドラゴンまで働くなんて他にないぞ!」
「働いてないの! むしろ邪魔してるの!」
ドラコはぺろっと口元を舐め、カウンターの上にピョンと跳び乗ると、ふてぶてしくエールをぐいっと飲み干した。
「俺、給料ゼロだけどな!」
「看板ドラゴンとしてちゃんと働いたら、考えてあげてもいいわよ!」
私が片付けながらチラリと睨むが、ドラコはまったく気にする様子もなく、のんびりとグラスを傾ける。
「へぇ、だったら俺の仕事って何だ? 看板の前でポーズでも決めりゃいいのか?」
「それくらいしなさいよ!」
そんなやり取りをしていると――
グラッ…
「あっ、ちょっと待っ――」
バランスを崩したドラコが、慌ててカウンターの上で踏ん張ろうとして……
バンッ!
ちっちゃい後ろ足が、よりによってエール樽に直撃。
ドォォォン!!!
「おわっ!?!?」
樽が見事にひっくり返り、店内に黄金色のエールの滝が流れ出す。
「ぎゃああああああ!!!」
私が悲鳴を上げる中、常連たちはジョッキを持って突撃。
「もったいねぇ! 受け止めろ!!」
「これは飲むしかねぇだろ!!」
猫サイズのくせに態度だけはデカいドラコも、慌ててちょこちょこと床を走り回りながら、口を開けて直接受け止めようとしている。
「ドラコ、あんたのせいでしょ!? 飲むなぁぁぁ!!!」
結局、店中エールまみれのドタバタ劇。こうして、『酔いどれ小屋』の初日は、酒の海と笑いの渦に包まれながら幕を閉じたのだった。
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