第44話 名探偵の推理が光る!
今日も酔いどれ亭は絶好調!
お客さんたちの笑い声が響く中、私は新作おつまみ「森のハーブサラダ」を仕上げていた。柔らかい若葉に、香ばしくローストしたヒマワリの種をたっぷりトッピング。仕上げにはエルダーフラワーのドレッシングをたっぷりとかけると、甘酸っぱい香りがふわっと広がる。このサラダは、スモーク系のお酒と相性抜群なんだから!
「リリィ、ちょっとそのナッツ多めにくれよ。いや、俺の腹に直接でもいいぜ?」
カウンターにだらっと身を預けた看板ドラゴンのドラコが、またも食い意地を張ってきた。
「何言ってるのよ、ドラコ! これはお客さん用よ!」
「けっ、ケチだな。」
そんなやり取りをしていると、店の扉が勢いよく開いた。
「リリィ殿、緊急事態です!」
現れたのは古びたコートに中折れ帽を被った男――自称名探偵のエドガー・バロウズ。彼の登場はたいてい厄介ごと付き。
「どうしたのよ、エドガー。今度は何?」
「いや、それが、君の店に真犯人が潜んでいる可能性があるんだ!」
「は? 犯人って何の?」
エドガーの話によると、最近、各地の酒蔵や酒場で樽がごっそり盗まれる事件が続いているらしい。彼はその犯人を追っていて、この近辺にまでたどり着いたんだとか。
「まさか、うちの店が狙われるっていうの?」
「可能性は高い。ここには貴重な酒が揃っているだろう?」
「ちょっと待って、そんな魔法樽泥棒とか本当にいるの?」
…と思いつつ、森で「魔法樽を寄越せ」とか言われて追いかけられた記憶が脳裏をよぎる。これ、もしかして本当かも。
エドガーが「スモークド・オールドファッション」を飲みながら探偵モード全開で話を続ける間、私は不安と好奇心でソワソワ。ウイスキーの深い香りに燻製のニュアンスが絶妙な大人の一杯を前に、彼の話は止まらない。
「リリィ、この樽に異常はないか?」
エドガーが急に貯蔵室を覗き込もうとするのを、ドラコがしっぽでブロック。
「おいおい、勝手に人の店の裏を漁るなよ。うちの酒樽は俺が守ってるんだから安心しろって。」
「そう言われると逆に怪しいな…!」
「おい、なんだと!? 俺を疑う気か?」
ドラコが目を細めてしっぽを振ると、エドガーは少し引きつつ帽子を直す。
「いや、すまない。だが、事件の手がかりはどこにあるかわからない。油断は禁物だ。」
そんな中、常連客のフォルクが陽気にやってきた。
「リリィ、なんか騒がしいな! 」
フォルクが座ると、さらっと衝撃的な一言を放った。
「そういえば、森で黒装束のやつが樽みたいなのを運んでるのを見たな。」
「は!? それ早く言いなさいよ!」
「だって、そんなの大したことじゃないと思ってさ!」
「それが手がかりに違いない!」
エドガーがテンション急上昇。
「よし、すぐに現場を調査しに行こう!…いや、その前にもう一杯だけ――」
「飲んでる場合じゃないでしょ!」
私とドラコがハモると、エドガーは恥ずかしそうに咳払い。
結局、酔いを覚ますためにコーヒーを飲み干して、エドガーは森へ出発していった。だけど私は、彼が帰ってくるまでに貯蔵室の酒樽を何度も確認する羽目に。
「…なんで私がこんなに疲れるのよ。」
ドラコがぽつりと呟いた。
「なあリリィ、探偵はいいけど、次はもう少し酔わずに働いてほしいぜ。」
「ほんとよ! 次はお酒を控えてくれると助かるんだけど!」
でもね、どんなに騒がしくても、酔いどれ亭はやっぱり楽しい。さあ、次のお客さんにはどんな一杯を出そうかしら?
─
影たちは気配を殺しながら、ひそやかに言葉を交わした。
「…探偵も動き出したか。」
一人が低く呟くと、もう一人がわずかに眉をひそめる。
「これまで、この酒場に集う多くの者たちを警戒していたが…。」
「もう、躊躇している場合ではない。踏み切る時が来たようだ…。」
影たちは静かに頷き合い、闇へと溶け込んでいった。
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