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酔いどれエルフと酒の歌  作者: チョコレ
第一杯 酔いどれ亭、大騒ぎ!
34/144

第34話 絶対に結婚しない貴公子!

 店の賑わいもピークを迎え、私はカウンターで最高の一杯を仕上げていた。グラスの中で琥珀色の液体がゆるやかに揺れ、繊細な泡が立ち上る。今夜の特製『森の月光エール』。香ばしい木の実とハーブの香りがほのかに漂い、飲み口はまろやかで、それでいてキレのある仕上がり。ミスティルの葉を浮かべることで、森の月夜を思わせる幻想的な雰囲気を演出している。


「ふぅ、完璧…」と、満足げにグラスを磨いていた、その時。


「リリィ!!酒だ!!今夜は最高に強いやつを持ってこい!!」


 扉を勢いよく開け、カウンターに腰掛けたのは金髪碧眼の貴公子レオナード・ヴァレンシュタイン。剣も魔法も一流、文武両道、見目麗しき貴族の跡取り――ただし、絶対に結婚しない男として悪名高い。


「…また破談になったのね。」


 ため息まじりに言うと、レオナードはピクリと眉を動かし、グラスを手に取った。


「違う!俺はただ…そう、考えが変わっただけだ!!」

「ふーん?で、今回はどの段階で逃げたの?」

「正式な婚約の直前で…」

「それ、もう逃げ遅れてるわよ!!!」

「誤解だ!俺は最初から結婚というものに縛られるつもりはなかった!!」

「じゃあ最初から付き合うな!!!」


 レオナードは『森の月光エール』を一気にあおると、目を閉じて酔いしれるようにため息をついた。


「はぁ…相変わらずいい酒だ…しかし、なぜだ…なぜ俺は、こうも自由を求めてしまうのだ…」

「知らないわよ!!!」


 その瞬間、店の扉がバァァン!!!と大きな音を立てて開いた。


「レオナード!!!!」


 店中がピクリと反応する。勢いよく踏み込んできたのは、美しい女性たち。


「ちょっと待て…これ、全員元婚約者じゃねぇか?」と、フォルクが小声で言った。


「うおおおおおおお!?!?!?」


 レオナードはグラスを落としそうになりながら、慌てて私の後ろに隠れた。


「リ、リリィ…助けてくれ…!」

「嫌よ!!巻き込まれたくない!!!」


 赤毛のクラリッサがバン!とカウンターに手をついた。


「レオナード!!あんた、どういうつもり!?婚約寸前で逃げるなんて許さないわよ!!」

「そ、そうよ!!私だって婚約指輪まで用意したのに!!」

「私なんか結婚式の招待状まで送っちゃったのよ!?」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 レオナードは全力でテーブルの下に潜り込む。


「お前ら…本当に俺のことを愛していたのか…?」

「当たり前でしょ!!!」

「…いや、マジでなんで全員から逃げたんだよ?」と、フォルクが困惑しながら尋ねる。


「だって、俺は自由が――」

「自由自由って言うけど、結婚してても自由な奴なんていくらでもいるわよ!!」

「…え?」


 レオナード、一瞬固まる。

 クラリッサが腕を組んで眉をひそめる。


「例えば、うちの兄!結婚してても旅に出まくってるし、家にはほとんどいない!!」

「うちの姉も!!商人だけど、夫とは全然べったりしてない!!」

「仕事の関係で別居状態の貴族夫婦なんてザラよ!!」


「…………」


 レオナードの顔が青ざめる。


「つまり…俺は…」

「勝手に結婚を誤解してたんじゃないの?」

「ぐおおおおおおおおお!?!?!?」


 レオナード、ショックでテーブルに突っ伏す。


「俺は…俺は今まで何を…!」

「何をじゃないわよ!!!早く全員に謝りなさい!!!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 こうして店の真ん中で、貴公子レオナードが過去の恋人たちに土下座するという、前代未聞の光景が繰り広げられた。


「はぁ、今日もドタバタね…」


 私はため息をつきながら、新しい酒を注ぐ。

 もうこの男、絶対結婚できないわね。

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@chocola_carlyle

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