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酔いどれエルフと酒の歌  作者: チョコレ
第一杯 酔いどれ亭、大騒ぎ!
33/144

第33話 失恋と魔法の大騒ぎ!

 今日も酔いどれ亭は大盛況!


 お客さんたちが楽しそうにグラスを傾ける中、私は新作のおつまみ、「ハーブとクルミの香ばしビスケット」を焼き上げていたところ。ローズマリーとタイムを練り込んだサクサクの生地に、ローストしたクルミをたっぷり混ぜ込んだこのビスケットは、香ばしい香りとナッツのほろ苦さが絶妙な一品。これなら、どんなお酒も格上げ間違いなし!


「おい、リリィ。早くそいつを俺の前に置けよ。香りだけで我慢できねえぜ。」

 カウンターに顔を乗せた看板ドラゴンのドラコが、しっぽを揺らしながらビスケットをガン見している。


「ドラコ、これはお客さん用! あんたには後で残ったらね!」

「またそのパターンかよ…俺がこの店の宣伝担当だってのに。」


 そんなやりとりをしていると、勢いよく店の扉が開いた。


「リリィさーん、また失恋しちゃったぁ!」

 金髪を揺らしながら泣きながら入ってきたのは、魔法学院の生徒フィオナ・メロ。顔は涙でぐしゃぐしゃ、でもどこか憎めない可愛さがあるのよね。


「またなの、フィオナ? 何回目か数えてる?」

「もうわかんないですぅー! 今度こそ運命の人だと思ったのに!」

 泣きながらカウンターに突っ伏すフィオナを見て、私は深いため息。


「はいはい、いつものね。」


 フィオナ専用のお酒、「ラブソング・ローズ」を作り始める。ロゼワインにバラのシロップを合わせ、少量のスパイスを加えた甘くてほろ苦い一杯。恋の甘さと苦さを象徴するようなこのカクテル、フィオナの失恋劇場を彩る名物になりつつあるのよね。


「はい、ラブソング・ローズ。これで元気出して。」

「リリィさーん、ありがとう…!」


 フィオナがグラスを抱えるように飲み始めると、店内にバラの香りがふんわり広がる。雰囲気は最高。…ただし、ここからが問題。


 酔いが回ると、フィオナは急に元気になって「即興魔法ショー」を始めるのがお決まり。


「リリィさん、私、もう大丈夫! だって魔法で幸せな思い出を作れるからぁ!」

「あんた、それ毎回言ってるけど、絶対やめてって言ったよね!」


 止める間もなく、フィオナが杖を振ると、店中にピンクの花びらが舞い散り始めた。お客さんたちは拍手喝采、大盛り上がり。…と思いきや、花びらが次第にハチミツみたいにベタベタしてきたじゃない!


「フィオナ! 絶対に失敗してるでしょ!」

「えーっ、そんなことないですよぉ~!」


 ドラコのしっぽには花びらが張り付き、彼は苛立ちを隠さない。

「おい! 俺のしっぽがネバネバだ! リリィ、早く何とかしてくれ!」


 私は慌ててお客さんたちにタオルを配りながら謝罪。

「みんなごめん! 今拭くから、ちょっとだけ我慢して!」


 その間もフィオナは魔法を止める気配ゼロ。杖を振り上げながら、さらに大きな花を咲かせようとしている。


「ほら、次はもっと素敵な魔法を――!」

「やめなさーい!」


 私は慌てて杖を取り上げ、フィオナはふにゃっとその場に座り込む。そして、完全に酔っぱらった状態で笑い続けるのだった。


 なんとか後始末を終えて、店がやっと落ち着いたころ、フィオナはカウンターに座り直してしょんぼり。

「私、やっぱり魔法も恋も全然ダメですねぇ…。」


「いや、魔法は危なっかしいけど、恋はまだ諦めなくてもいいでしょ。あんた、まだ若いんだから。」


 そう言って、私は「ハーブとクルミの香ばしビスケット」を差し出す。焼きたてのビスケットから漂うローズマリーとクルミの香りが、ほんのりと温かい癒しを与える。


「美味しい…! リリィさん、やっぱり最高ですぅ~!」

「さっさと食べて、今度はちゃんと水飲んで帰りなさい!」


 フィオナが元気を取り戻す横で、ドラコはまだぶつぶつ文句を言っている。

「おいリリィ、俺のしっぽについたネバネバ、本当に全部取れたのか?」

「だから拭いたってば! 文句があるなら、自分で洗ってよ!」


 ため息をつきつつ、店内を見渡す。泣いて笑って大騒ぎしても、最後はみんな笑顔になれる。それが酔いどれ亭のいいところなのよね。

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@chocola_carlyle

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