第33話 失恋と魔法の大騒ぎ!
今日も酔いどれ亭は大盛況!
お客さんたちが楽しそうにグラスを傾ける中、私は新作のおつまみ、「ハーブとクルミの香ばしビスケット」を焼き上げていたところ。ローズマリーとタイムを練り込んだサクサクの生地に、ローストしたクルミをたっぷり混ぜ込んだこのビスケットは、香ばしい香りとナッツのほろ苦さが絶妙な一品。これなら、どんなお酒も格上げ間違いなし!
「おい、リリィ。早くそいつを俺の前に置けよ。香りだけで我慢できねえぜ。」
カウンターに顔を乗せた看板ドラゴンのドラコが、しっぽを揺らしながらビスケットをガン見している。
「ドラコ、これはお客さん用! あんたには後で残ったらね!」
「またそのパターンかよ…俺がこの店の宣伝担当だってのに。」
そんなやりとりをしていると、勢いよく店の扉が開いた。
「リリィさーん、また失恋しちゃったぁ!」
金髪を揺らしながら泣きながら入ってきたのは、魔法学院の生徒フィオナ・メロ。顔は涙でぐしゃぐしゃ、でもどこか憎めない可愛さがあるのよね。
「またなの、フィオナ? 何回目か数えてる?」
「もうわかんないですぅー! 今度こそ運命の人だと思ったのに!」
泣きながらカウンターに突っ伏すフィオナを見て、私は深いため息。
「はいはい、いつものね。」
フィオナ専用のお酒、「ラブソング・ローズ」を作り始める。ロゼワインにバラのシロップを合わせ、少量のスパイスを加えた甘くてほろ苦い一杯。恋の甘さと苦さを象徴するようなこのカクテル、フィオナの失恋劇場を彩る名物になりつつあるのよね。
「はい、ラブソング・ローズ。これで元気出して。」
「リリィさーん、ありがとう…!」
フィオナがグラスを抱えるように飲み始めると、店内にバラの香りがふんわり広がる。雰囲気は最高。…ただし、ここからが問題。
酔いが回ると、フィオナは急に元気になって「即興魔法ショー」を始めるのがお決まり。
「リリィさん、私、もう大丈夫! だって魔法で幸せな思い出を作れるからぁ!」
「あんた、それ毎回言ってるけど、絶対やめてって言ったよね!」
止める間もなく、フィオナが杖を振ると、店中にピンクの花びらが舞い散り始めた。お客さんたちは拍手喝采、大盛り上がり。…と思いきや、花びらが次第にハチミツみたいにベタベタしてきたじゃない!
「フィオナ! 絶対に失敗してるでしょ!」
「えーっ、そんなことないですよぉ~!」
ドラコのしっぽには花びらが張り付き、彼は苛立ちを隠さない。
「おい! 俺のしっぽがネバネバだ! リリィ、早く何とかしてくれ!」
私は慌ててお客さんたちにタオルを配りながら謝罪。
「みんなごめん! 今拭くから、ちょっとだけ我慢して!」
その間もフィオナは魔法を止める気配ゼロ。杖を振り上げながら、さらに大きな花を咲かせようとしている。
「ほら、次はもっと素敵な魔法を――!」
「やめなさーい!」
私は慌てて杖を取り上げ、フィオナはふにゃっとその場に座り込む。そして、完全に酔っぱらった状態で笑い続けるのだった。
なんとか後始末を終えて、店がやっと落ち着いたころ、フィオナはカウンターに座り直してしょんぼり。
「私、やっぱり魔法も恋も全然ダメですねぇ…。」
「いや、魔法は危なっかしいけど、恋はまだ諦めなくてもいいでしょ。あんた、まだ若いんだから。」
そう言って、私は「ハーブとクルミの香ばしビスケット」を差し出す。焼きたてのビスケットから漂うローズマリーとクルミの香りが、ほんのりと温かい癒しを与える。
「美味しい…! リリィさん、やっぱり最高ですぅ~!」
「さっさと食べて、今度はちゃんと水飲んで帰りなさい!」
フィオナが元気を取り戻す横で、ドラコはまだぶつぶつ文句を言っている。
「おいリリィ、俺のしっぽについたネバネバ、本当に全部取れたのか?」
「だから拭いたってば! 文句があるなら、自分で洗ってよ!」
ため息をつきつつ、店内を見渡す。泣いて笑って大騒ぎしても、最後はみんな笑顔になれる。それが酔いどれ亭のいいところなのよね。
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