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酔いどれエルフと酒の歌  作者: チョコレ
第一杯 酔いどれ亭、大騒ぎ!
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第27話 嵐を呼ぶ郵便屋!

 開店早々、嵐の予感。ドアが勢いよく開き、強い風が店内に吹き込んだ。


「ああもう、何なのよこの風!」


 私はカウンター越しに叫んだが、風の主はお構いなしに足を踏み入れる。


「リリィ!今日も元気に郵便配達してるよ!」


 現れたのは、風の魔法で手紙を運ぶ郵便屋、アルヴィン・ウィンリー。にやけた顔が妙に腹立つのよね。


「アルヴィン、今日は普通に飲むだけにしてくれない?配達と魔法は置いてって!」


 しかし、彼は聞いちゃいない。鞄から大量の手紙を取り出し、勝手にカウンターに並べ始めた。


「いやいや、今日はこの店で『最新の郵便情報』をお届けするんだ!」


「最新のって、それ嫌な響きね…」


 案の定、嫌な予感は的中。彼は次々に手紙を魔法で開封し始めた。


「さあ、まずはグラントおじさん!奥さんからの手紙、『今日は帰りにミルク買ってきて』だって!」


「おいおい!それをここで言うな!」


 グラントおじさんが慌てて手紙を奪い取ろうとするが、アルヴィンは余裕の表情でかわす。


 次は…ローザさん!?


「『君の瞳は夜空のように美しい』だって。おお、これはロマンチック!」


「やめて!それ、私だけの秘密なのに!」


 ローザは真っ赤になって慌てるが、周りの客たちは爆笑。ほんと、やめてあげてよ。そして――とうとう、私の手紙に手を出した。


「さて、店主リリィさんの郵便は…『リキュールの在庫が足りないわ。どんなお酒を作るのか、もっと計画的にね。ジーナより』って、なんだこれ、事務的すぎる!」


「つまんないとか言わないでよ!それこそ店の命綱なんだから!」


 私はカウンターを叩いて怒ったが、アルヴィンはケロリと笑う。


「でもさ、リリィ、だからこそこの手紙の価値があるんだよ!」


「…どういう意味?」


「東の大陸、ルーチェリアでは『魔導回路』ってマナを使った遠隔通信があるんだろ?でもこの辺にはそんな便利なもの、ないだろう?」


 確かに、こっちにはそんな高度な技術はない。手紙や直接の伝言が未だに主流だ。


「だからこそ俺の風の配達が重要なんだ!」アルヴィンが胸を張る。「手紙は人と人を繋ぐんだぜ、リリィ。それを届ける俺の役目は、めちゃくちゃ大事だろ?」


 …まあ、その気持ちは分からなくもないけど、今の状況を見る限り、それを語る資格は微妙じゃない?私はため息をつきながら、カウンターにグラスを置いた。


「まあ、そんなに風の力を誇るなら、それにちなんだ一杯を作ってあげるわよ。」

「お、いいねぇ!風を感じる酒、なんて風流だ!」


 私は、店の奥から冷えたボトルを取り出す。ベースとなるのは、《エアリアル・ジン》。蒸留の際に空気の流れを操り、通常のジンよりも軽やかで透明感のある味わいに仕上げた特別な一瓶だ。そこへ、柑橘系のエルダーフラワーリキュールを加え、爽やかな香りを際立たせる。


 さらに、カクテルグラスの縁には風のように舞う極薄の氷片をあしらい、まるで吹き抜ける風の軌跡を再現。仕上げに、ライムの皮をひとひねりし、その香りをグラスにまとわせる。


「さあ、できたわよ。『ウィンド・エコー』。」


 私は、透き通る青白い光を放つグラスをカウンターに滑らせた。アルヴィンは目を輝かせながら、それを手に取る。


「…おお、香りが軽やかで、まるで風みたいだ…!」


 一口飲む。


「…っ! はぁぁ、これは…! まるで草原を駆け抜ける風そのものじゃないか!」


 彼はしばし言葉を失い、グラスを見つめる。


「リリィ、お前、やっぱり天才だな…!」

「ふふん、でしょ?」


 しかし、得意げに微笑む間もなく、アルヴィンが調子に乗ったのか、風の魔法が暴走し始めた!カウンターに並んでいた手紙が宙に舞い、店内はまるで紙吹雪状態に。


「おい!俺のラブレターが飛んでるぞ!」

「リリィ、あんたの酒の請求書が舞ってる!」

「やめてよ!それだけは!」


 私はカウンターに飛び乗り、大声で叫んだ。


「アルヴィン!何とかしなさい!」

「ええと、風を逆流させれば……あれ、止まらない!? うわぁ!」


 手紙の嵐に巻き込まれたアルヴィンが床に転がり、風はさらに勢いを増した。つまみのナッツが空中を舞い、『ウィンド・エコー』のグラスがテーブルから転がり落ちる。透き通った青白い液体が床にこぼれ、まるで夜の風が砕け散ったみたい。って!


「ドラコ、何とかして!」

「おいおい、なんで俺が!?」


 それでもドラコはナッツをキャッチし、倒れたカクテルグラスを器用に爪で救い上げてくれた。やるじゃない!


 最終的に嵐が収まったのは三十分後。アルヴィンは散らかった手紙を拾い集めながら平謝り。


「すまない、リリィ…。でもさ、これも手紙が人を繋ぐ証拠だろ?」

「いやいや、人を繋ぐどころか壊しかけたわよ!」


 私が溜め息をつきながら店を片付けていると、彼が一通の手紙を差し出した。


「これ、リリィに。特別に綺麗な封筒に入れといたから、開けてみなよ!」


 中を開けると――ただの空っぽの紙だった。


「ちょっと!」


 私の愚痴をよそに、アルヴィンはニヤリと笑って店を後にした。

 ほんと、次来る時は平和にお願いしたい…!

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@chocola_carlyle

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